スイス出身の5人組が、プロデューサーにH.E.A.T.のヨナ・ティーを起用してレコーディングを行い’19年に発表した1stアルバム。(前身のHAIRDRYER時代に既にアルバムを制作しているので、正確にはバンド名を改めての出直しデビュー作というべき1枚なのかな) バンド名がFIGHTER Vで、アルバム・タイトルはシンプルに『FIGHTER』。これだけだとデモテープとシングルのみを残して消えたNWOBHMのオブスキュア・バンドの発掘音源集みたいですが、彼らの結成時期は’10年と結構最近ですし、プロデューサーの人選からも明らかな通り、出している音にも無骨さは皆無。煌びやかなKeyと分厚いVoハーモニー、思わず合唱を誘われるキャッチーなコーラス・ワークといった80年代的要素をふんだんに取り入れたメロディアスHRアルバムに仕上がっています。 元気よくかっ飛ばす疾走ナンバーから、明るく跳ねるロックンロールまで収録曲のバラエティは多岐にわたりますが(ヨナ・ティーがH.E.A.T.用に準備した楽曲だったという⑦も収録)、いずれにおいても北欧メタルに通じる透明感を湛えた哀愁のメロディ作りの上手さが際立っており、特にグッと胸に差し込むメロディの泣きと、ライブ映えする曲調を共存させたアルバム表題曲④、抜群に上手いわけではないものの愁いを感じさせる声質のVoの歌唱が映える、爽やかさを振りまきながら駆け抜けていくハードポップ⑥は、FIGHTERというバンドの魅力が的確に捉えられた本編のハイライト・チューンですよ。 先頃、5年のブランクを経てリリースされた2nd『HEART OF THE YOUNG』も是非チェックせねば!という気にさせられる力作です。