バンドの看板でもあったバイオリン奏者ロビー・スタインハートの去ったKANSASが、'83年に発表したジョン・エレファンテ加入2作目となる9thアルバム。 前作収録の名曲“PLAY THE GAME TONIGHT”のスマッシュ・ヒットに気を良くしたレコード会社の「もっとコマーシャルなアルバム作らんかい」との圧力により、曲作りの主導権がケリー・リヴグレン(G)から、フロントマンたるジョンと、彼の兄でプロデューサー/コンポーザーとして鳴らすディノ・エレファンテに移行。それに伴い、ニール・カーノンが手掛けた乾いた音作りといい、シンセを大々的にフィーチュアしてメロディから湿り気が、曲展開からはプログレ色が減じられた楽曲といい、今作は(まさしくアルバム・タイトルが示す通り)大胆な作風の刷新が図られた仕上がりとなっています。 正直、スティーヴ・ウォルシュ在籍時代のKANSASサウンドを期待すると肩透かしを食う可能性大ですが、「ディノ&ジョンのエレファンテ兄弟が取り仕切ったメロハー作品」と気持ちを切り替えて本作に接すると、GリフがSURVIVORの“EYE OF THE TIGER”みたいな①とか、後に続くカラッと明るくポップな②とかも「これはこれでありだね!」と思えてくるから不思議ですよ。またアルバム後半には、山あり谷ありの曲展開をアップテンポで駆け抜けていく⑦、ケリーのペンによる、タメを効かせつつ重厚に盛り上がっていく⑧&リズミカルな曲調に哀愁のメロディが乗せられた⑨といった、かつてのプログレ・ハード風味がさりげなく薫る逸品もちゃんと収められていることを付け加えておきます。 KANSAS入門盤にゃお薦めしかねますが、スルーは勿体なさ過ぎる。自分なりの曲順を考えてみると、より評価が高まる1枚かもしれませんね。