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Chaos A.D. / SEPULTURA
絶叫者ヨハネ ★★ (2006-02-03 23:49:00)
一般的にはまるで「前門の虎、後門の狼」という具合に「Arise」と「Roots」という二大名作の間に挟まれ、今ひとつ目立たない感じの作品ですが、自分的にはこれが一番好きです(というかSepulturaはこれとライヴ盤くらいしかちゃんと聴いてません、ごめんなさい。)
前作までのハードコアスラッシュ路線と以降のモダン民族路線の橋渡し的な作風ですが、こういう過渡期にしかできない微妙なバランス感が魅力です。楽曲に即効性が少なく、正直最初は地味であまり印象に残りませんが、二度、三度と聞き返すとあちこちに面白いギミックが隠されていているのがわかります。聞くたびに発見があって楽しく、聴き手を飽きさせません。
ハイライトは何と言っても、魅力的なバンドのパフォーマンス、Vo含めて全員が実に味のあるプレイを繰り広げています。特にイゴールのドラムスは最高。この人の場合、テクもさることながら、すごく頭がよさそうな感じというか、センスが抜群なのです。まさにHM界のスティーヴ・ジャンセン。もし自分にドラムが叩けるなら、イゴールのように叩きたい、思うくらいのカッコのよさです。
(余談ですが、Blind Guardianのドラムスは絶対イゴールの影響を受けてると思う、ほとんどパクリ?、というようなフレーズがあちこちに出てきます)。
もう一つ面白いのがアンドレアスのギター。リフワークこそメタリックですが、音色の感触があまりメタルっぽくない機械的な感じで、ソロパートなどまるでダークなUK New Wave(Bauhausとか)のような趣きです。HMでこういうギターの使い方をするのは非常に珍しいと思います。
Sepulturaというとハードコアスラッシュあるいは民族へヴィロックで、どっちにしろ「情動的・肉体的な」「熱い」音楽をやるバンドというイメージがあるのですが、このアルバムからはなぜかすごく無機的で冷徹な印象がただよってきます。先にあげたギターやところどころに出てくるインダストリアル風の音使いのせいか、何故かマシーナリーで不穏、かなり不気味な感じがします。タイトルどおり「不安」・「混沌」・「世紀末」な感触です。
極めつけは「Manifest」、扇動的なリズムにのせて、無感情に祖国の恥部を暴露する反体制ラジオ局風の「声明」が半端じゃなく怖いです!!(歌詞の内容が分かるとゾッとします。ブラジルの刑務所だけには絶対に入りたくない!!)
そういえばこういう雰囲気って、初期のKilling Jokeの得意技だったはず。あんまり語られませんが、このバンドはメタルやハードコア以外のバックグラウンドも結構もっているのでは?
というわけで、Voは激情かつスピリュチュアルな「生命の雄叫び」、ギターはダークで冷酷無情な電気音風、ベースが突進&グルーヴ両対応で、ドラムがトライバル(原始的)で同時にハイセンスという、奇想天外な組合わせ。にもかかわらずバンドの音として完全にまとまっているのだから凄い。類型的なスラッシュ・モダンへヴィとは一味も二味違った個性あふれる音です。こういう非スタンダードな組み合わせって大好きです。
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