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The Grinding Wheel / OVERKILL
失恋船長 ★★ (2025-03-03 01:53:19)
アルバム毎に手を変え品を変え同じベクトルだがアプローチを変えて楽しませてくれた彼ら、オールドスクールへの復権。濃密なドラマを小気味よく聴かせ中弛みとは無縁の壮快感に溢れた傑作を連発した。7分越のオープニングナンバー、彼ららしさを詰め込んだ作風で一曲の中に多様なルーツをねじ込んだのは良かったが、正直長い、それは全般的に言えることで少々ランニングタイムが長いと感じる場面が目立った。あと、どうしてもドラムを音が気になる。それとアンディ・スニープの起用は、血湧き肉躍る苛烈なる高速サウンドの狭間で歯車の如きガチッとハマっているが、個人的には、そこまで大好きな音作りではない。

しかし、方向性を絞り込みラフなパワーを解き放った猛獣サウンドの痛快さ、そこのけそこのけOVERKILLが通ると言わんばかりにパワーメタル色の強いナンバーがツッコんでくる。やはり②のようなヤクザパンクメタルは大好きだ。良い意味でのキャッチーさが生きている。でもメタリカみたいにチョイと長いので詰めてくれると、もっと視聴感も上がったろう。セルフプロデュースだし、自分たちのやりたい音を現代メタルの名手にミキシングして貰うことで、古くて新しい新世代の古典サウンドに磨きを掛けたと言うことでしょうね。

このクオリティで文句を言われたら、それは悪質クレーマーでしかありませんし、雑誌のレビューで右を向いたり左に傾いたりする輩でもない限り、今作のもつ意味合いと放たれる無限のエナジーに圧倒されます。曲が長い短いは個人の趣味趣向の問題。IRONBOUNDも長かったが、今作とは方向性がチョイと違うので比較にならないし意味もない。何より彼らが素晴らしいのは、安易な原点回帰や過去の財産を食い潰すことなく、自らを見つめルーツを邂逅している。

前作よりも隙間があり立体的になった音像、そのおかげで聴きやすくなりました。ここは推奨されるべき美点ですが、個人的にはそうでもない。思想や理屈でねじ伏せるような知的サウンドでもないので、もっと下品な方が好きなんですよね。まぁ日頃、貧乏クサイ地下も地下のNWOBHMばかりを愛聴しているので、メジャー過ぎると照れくさい。しかし、紛れもない現代の古典だ。クラシックメタルを愛するモノの仕事である。

もはやスラッシュメタル云々で語るべき存在ではないだろう。これこそが真っ当なヘヴィメタルであろう。

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