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The House of Atreus: Act II / VIRGIN STEELE
ゴリャートキン ★★ (2009-02-11 11:29:00)

前作のテーマは「戦争は栄光ではない」ということだった。
トロイの街々は破壊しつくされ、王女は奴隷に身を落とした。
そして戦争の英雄アガメムノンは王妃の不義に遭い、帰還してまもなくバスタブの中で殺された。
本作ではさらに物語の真相に迫る。
母によって父を殺された子供たちは誰に復讐すればいいのか。
夫殺しと母殺し、どちらの罪が重いか。
父か母か。男か女か。
ギリシアの古き神々は女を支持し、新しき神々は男を支持する。
「血には血を」「剣の掟」の是非。
裁判では1票差で母殺しのオレステスが許される。
これは全て現代の話である。
ギリシア悲劇の中ではオレステスは生き延びるが、本作ではデヴィッドは彼に自殺をさせる。
これで、呪われたアトレウス一族の血による惨劇もいったんは終了し、平和が訪れる。
しかし最後には「輪廻転生」のテーマメロディが出て来る。
デヴィッドはマリッジ3部作以降、このメロディにこだわっている。
彼は「意識の永続」という考え方が好んでいる。
そうなのだ。仮に「輪廻転生」というものがなかったとしても、我々は歴史の中に生きている。
歴史の中に生み落とされる。そして過去と未来とを、意識させられながら時を過ごす。
「OK.次は上手くやれるだろうか?」それがデヴィッドの姿勢である。
だからデヴィッドは、インタビューで「過去」や「歴史」「神話」などの言葉が出て来ると過剰に反応する。
「俺がアルバムでやっているのは、現代の話なんだ!」
オレステスは死んだ。しかし、我々はオレステスの生まれ変わりだ。
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