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Godspeed on the Devil’s Thunder: The Life and Crimes of Gilles de Rais / CRADLE OF FILTH
Spleen ★★ (2009-02-09 03:08:00)
購入前、よくジャケットに色気がないという意見を聞きました。確かに事実ですが、中のアートワークは結構なヤバさ加減です。もう色気とかどうでもいいぐらい。
曲に関してはもうちょっとドラマティックな展開が欲しいかなとも思いましたが、それでは単なる過去の踏襲になってしまうので、前作のストレートなヘヴィネスを踏まえた表現形態の方がよりクレイドルの現在を表しているように思えます。ただ、スペシャル・エディションの方には彼ららしい大仰さと凶暴さ全開の長いインストがあるので、このために2枚組買ってもいい! という気になりました。
また、ダニの高音シャウトが好きという方には物足りないところもあるかもしれません。実際自分も、駄々っ子(ダニの高音ってそういうイメージなので……)が大人になってしまったような気がして一抹の寂しさを感じました。でも低音ボイスは回を重ねるごとに禍々しさが増しています。凶行と哀しみの歴史という共通点はあれど、エリザベスの物語の語り部としては金切り声、ジル・ド・レイの物語には濁声と言ってもいいような低音が似合うと思います。
ジルの語りを『Midian』でも共演したダグ・ブラッドリーが担当しているのが嬉しいところですね。以前はダニ共々アルバム世界のストーリーテラー(オラクル?)のような役でしたが、今回は静かながらも狂気と悲哀に満ちたジルに入り込んでいて、時にぞっとさせられます。
それにしても、この物語の最後には驚かされました。救済が見つかるとは思えない物語なのに、どこか救いのような描写がある。還る肉体を失い、地獄からも閉め出されたジルの魂はどこへ向かうのか。そして堕ちた英雄と聖女の僅かな繋がりとは……色々と考えさせられる結末でした。

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