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Hail to the Thief / RADIOHEAD
kotora ★★ (2004-05-29 23:53:00)
撃沈されるのには、意外に時間がかかった。
RADIOHEADの、例の双子のアルバム後の気になるスタジオ通算6枚目。"KID A"や"AMNESIAC"と比べると、さらにロック感や、バンドの一体感を取り戻した感じだ。しかし、どんなバンドでも、その時々で音が変わっていくように、彼らも、たまたま、ギター色・ロック色・バンド色を取り入れたというだけで、一度進化した方向に反することなく、さらに新たな可能性を提示しているという点を踏まえて、前2作の方向性を精神的に、または根本的なサウンド面においても継承しているという事実は高く評価できるだろう。
また、DEPECHE MODEを感じさせる曲もあったり、毛色の変わった曲もあったりで、いろいろな面を見せてくれる。特に"there there"以降の並びは絶品だな~、印象的だな~と関心する。ただ、音だけをとると明らかにロックではないように感じる曲がある。しかし、違和感がないのは、全体的な統一感を意識しているからだろう。誰がなんだかんだいっても、RADIOHEADがロックアクトであるのは、この統一された姿勢の中に確実に感じるところであり、いくら音が"KID A"のようになっても、トムがこういった歌詞を書きつづける限りは、ロックだな、と思っていていいだろう。相変わらず、明るく心がうきうきするようなナンバーは皆無だ。まるで、今の世知辛い不況風の世の中を忠実に投射するかのようだ。しかし、何故か僕はRADIOHEADに期待してしまう。ほんのわずかなひとすじの光を見たいが為に、暗い世界とわかっていても手を伸ばしてしまうのだ。果してそこに何があるのか?
さて、アートワークも英国流のユーモアたっぷりで、英国特有なんて言わずとも、RADIOHEAD流に、暗く複雑で皮肉な世界が恙無く展開されている。一つずつ解読しながら眺めていてもいいだろう。そういった暗い人、いや、こだわり派の人にも楽しめる。
オリコンでも確か5位以内にランクされ、FMでも、シングルカットされた"There there"が強力にエアプレイされていたので、変に知名度があるため、逆に遠ざかっている人は必聴。あなたが予想しているほどなまっちょろいバンドではないですよ。ファン歴9年のぼくが言うのもなんですが、非常に奥の深い彼らが、ここまで有名になるのが不思議なくらいですから。

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