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Fight for the Rock / SAVATAGE
火薬バカ一代 ★★ (2007-07-25 22:08:00)
タイトルとは裏腹に、スピード・チューンが姿を消し、その代わりにBADFINGERやFREEのカヴァーを収録する等、
実験的な作風がファンの間で賛否両論を呼んだ、'86年発表の3rdアルバム。
角が取れて丸みを帯びたソフトなサウンド・プロダクションや、女性ファン層を狙ったと思しき歌詞、
そして大胆に取り入れられたKeyの印象の強さから、「ポップ化した」と評される事の多い作品だが、実際のところ、
収録されている楽曲の方向性自体は、前作『POWER OF THE NIGHT』と大差ない。疾走曲がなくなったとは言え、
ズッシリとヘヴィネスの効いた楽曲は①を筆頭に十分アグレッシブだし、全面的に導入されたKeyにしても、
ライトな雰囲気作りよりも、寧ろ、クラシカルなイントロを担当する⑤や、初期の頃を思わせるダークな⑥等を
聴けば明らかなように、主に楽曲の完成度を高める方向で有効活用されているので、チャラい印象は皆無。
前述したカヴァー2曲や、1st『SIRENS』収録バラードのリメイク②辺りを飛ばして聴けば、
これまで通りの硬派なHMアルバムとして楽しむ事も十分可能だ。
リフにリードにソロにと、相変わらず「歌心」に溢れたメロディアスなプレイを連発するクリス・オリヴァのGの素晴しさは
今更言うに及ばず、今回はジョン・オリヴァも、クセの強い濁声の歪ませ具合を最小限に抑えて歌っているので、
彼のクドイ歌唱が苦手という人でもスンナリと受け入れられるかもしれない。
ただ、そのせいか全体的に、楽曲がどうにも薄味というか淡白に聞こえ、強力なキメ曲の不在と相俟って、
SAVATAGEの作品史上、最も地味な印象を受けるアルバムなのもまた、間違いないのであった。

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