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Dirt / ALICE IN CHAINS
T-MIRAGE ★★ (2005-05-02 17:43:00)
90年代という狂気と混沌と退廃とドラッグが生み出したモンスター、アリス・イン・チェインズ。その音楽を聴くときは必ずレインの精神性と対峙することを強制される。その意味合いではプリンスのアルバムを聞くときと似ている。常にレインのパーソナルな曲という印象を受けるのだ。自分はウネウネ系はあまり聞かないのだがこれは気に入っている。歌詞世界は人間が隠したい部分を見事に肯定している。狂気を肯定する、これこそロックだけに許された特権のひとつなのかもしれない。奇麗事なんぞ糞喰らえ、ということか。と同時に楽曲事態が優れているのが驚異的である。各曲にオリジナリティーがあり、しかも意外性のあるメロディーが随所に散りばめられている。ダークという色合いという点では90年代のブラック・サバスへの返答という感じがするのだが過度にどんよりすることがなく飽きない。複雑なリズムをこなすリズム隊の力量も凄い。ジェリーはユニークなリフ作りのセンスや紡ぎだすメロディー、エフェクターの使い方が良い。やはり90年代を代表するギタリストである。そして正気と狂気の間を彷徨う20世紀最後の吟遊詩人、レインの歌は神憑りといっていいほど完璧な出来映えである。まるで歌うことでのみ己の存在を証明しているかのような、まさに魂を封じ込めているかのような特別な何かを感じる。インナー裏のメンバー写真で虚ろな目でこちらを見つめる彼の残したメッセージの意味は、遂に謎のままで終わってしまった。Them BonesからRoosterへいきなり引き込まれる圧巻の構成はまさに麻薬的。Would?は90年代のアンセムのひとつ。
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