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The 7th Blues / B'Z
3割2分5厘 ★★ (2004-03-27 17:00:00)
B'zで最も好きなアルバム。

松本と稲葉が、1つのターニングポイントであったと語る、タイトル通りの7thアルバム。
「IN THE LIFE」「RUN」で「王道B'zサウンド」を極め、セールス的にも大成功を得たB'zは、一切守りに入ることなく貪欲にやりたい音楽を追求しようとした。
その結果、2枚組みのボリュームになってしまったのだろう。曲数が多いこともあり「Queen of Madrid」「The Border」あたりは退屈に聞こえる。そりゃしょうがない。
それでも「裏の名盤」と呼ばれる由縁は、松本・稲葉がこのアルバムに込めた思いが並々ならぬものだからだ。

松本にとっては、より自らのルーツに近い音楽に接近したサウンド。
激しいハードロックに、ブルースを意識したものもあれば、壮大なストリングスの大作もある。
このアルバムに、当時松本がやりたかったアプローチの全てをぶつけたと言っても過言ではないはずだ。
この作品は海外のロック作品からの影響、俗に言うパクリが多い。
「MY SAD LOVE」はもろWHITESNAKEだし、「Strings~」はGARY MOOREのフレーズそのままの箇所がある。
だが一方で「Sweet Lil' Devil」でZEPPELINに、「farewell song」でBEATLESにリスペクトを示しているように、
それだけ松本の今回のサウンドは自分の本当に好きな、自分の本当にやりたいサウンドであることも明らかである。

と同時に、稲葉の作詞は史上稀に見るほど、重くダーク、しかし一方では明るい、いやそれを通り越して「狂ったような」歌詞の両極端に分かれており、
アルバム全体として、愛を失った苦しみに悶える男の姿が、時に卑猥な言葉で、時に哀しい言葉で描かれている。
「LOVE IS DEAD」、愛は死んだというのに恋人を忘れられず、
「未成年」だからと女性に裏切られ、
あなたはいるはず、と思っていた「闇の雨」の向こうには誰もいなかった。
「春」には背徳を恐れ本音を切り出せず、
「Don't leave me」と叫んでも恋人は戻って来ない。
「赤い河」に飛び込むことができず、限られた自由を叫びまくる事にした主人公は、
「WILD ROAD」を走り続けた。
「SLAVE TO THE NIGHT」となり、快楽を求め続ける「JAP THE RIPPER」と化した。
朝まで「もうかりまっか」、と飲み続けた。
しかし、「破れぬ夢を引きずって」でも自分を変えなければいけないことに気付き、
Hey Judeを「farewell song」として再生を果たす・・・

俺の好きな音楽のタイプは様々だが、そのうちの1つは、アーティストが鬼気迫るほどに音楽的表現を追求した作品である。
典型的なパターンはプログレだ。
勿論、B'zのこの作品をYESの「危機」やKING CRIMSONの「宮殿」と並べて扱うつもりは毛頭ない。
しかしそれぞれが挑戦しているジャンルにおいてという意味では、やはりこの作品にもそういう魅力があるような気がする。
★★★★★
注目曲→「闇の雨」
B'zで最も好きな曲は、と聞かれれば真っ先にこの曲を挙げられる自信がある。
歌詞が本当に素晴らしいし、
歌詞に関連して、ラストの松本の哀愁溢れるギターソロは、男女の幸せを祝福するものなのか、それとも悲しい結末を予期するものなのかなどと考えてしまう。
【人生のアルバム⑩選 part2】

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