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Blizny / TURBO
失恋船長 ★★★ (2025-03-17 03:28:56)
バンドの顔であるヴォイチェフ・ホフマンの年齢を考えたら、もうそう作品は作れないだろうと思うと今作は誠に感慨深いモノがあります。ポーランドの生ける伝説、そう呼んでも大げさではない大ベテランが12年ぶりにリリースした最新作。いやー、まさかとは思いましたが今なお現役で活動して新譜を届けてくれた奇跡に感謝ですよ。

古典ハードロックそしてNWOBHMからのスラッシュメタル、最終的にはグランジ/オルタナムーブメントにも手を染めたバンド。常に時代の流れに即しながら音楽性を変遷してきましたが、今作で味わえるサウンドは全時代を網羅したような作風になっており、統一感というのはダークでシリアスな質感に委ねられているのだが、今更彼らが突拍子もないスタイルに走るわけでもないのでストレス概ね感じる事なく最後まで楽しめる。

ダークでメランコリックなナンバーや技巧的にはそうでもないのだが、メロディアスな旋律を紡ぐソロなど、このバンドの持ち味は十分に味わえる。リードヴォーカルの大役務めるトマシュ・ストルシュチクの声も前任者に似ている点も、こういうスタイルでは効果的に機能。豪華ゲストとヴォーカルバトルやギターでの客演などもある今作。

ある意味、現代的なエッセンスと古典サウンドの邂逅というのを過去イチ高次元で融合させてくれた。昔のようなキレッキレのスピードメタルはないのだが、おじいちゃんなヴォイチェフ・ホフマンと孫みたいな若いプシェミスワフ・ニェズゴツキとのツインギター編成を成立させているのは凄い事だと思っている。後半のハイライトとなる⑩など、そこまでの流れがあるからグッと染みてくる。そしてスローなクロージングソングは響かせる刹那な響き、アメリカでもドイツでも北欧でもないポーランドという固有のメロディというモノが存在しているのだと思う。

枯れた味わいのギターサウンド。巻き舌も全然に苦にならない。もっと聴いていたいと思わせるクロージングソングだ。もっと厳つい時代もあるし、やはり破れかぶれなKawaleria Szatanaや初期の名盤Dorosłe dzieciのようなスタイルに身を引き寄せられるのだが、ここで聴ける両極端の魅力、それを綱引きさせることで産みだした緊張感。これも現代のTURBOサウンドとして大いに支持できるでしょう。

お好みで摘まみ食いしながら聴くのが一番でしょう。④みたいなスピード感とエモーショナルなギターソロ、そしてベースソロも挟む、みたいな曲もあるしね。ドラマ性も上手く詰め込んだバンドサウンドを色んな角度からお楽しみください。

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