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Force Majeure / DORO
火薬バカ一代 ★★★ (2020-12-08 00:22:44)
ドロ・ペッシュというと、個人的には今でも「元WARLOCK」の肩書で語ってしまいがちなのですが、既にソロとしての活動期間の方が圧倒的に長い彼女にしてみりゃ「いつまで過去のこと引き摺ってんのさ」ってなもんじゃないでしょうか。
‘89年発表の本作は、マネージャーとのトラブルが原因でWARLOCKというバンド名が使用できなくなったため、初めて「DORO」名義でリリースされた記念すべき1枚で、レコーディングはニューヨークで行われ、バックに名の知れたアメリカ人ミュージシャンを起用(ドラマーはボブ・ロンディネリ)。いきなりPROCOL HARUMの名曲“青い影”のカヴァーで幕が上がる意表を突いた本編の構成等、このアルバムが「ドロ・ペッシュというソロ・アーティスト」の作品であることをガッツリ主張する仕上がりとなっています。
彼女の歌を主役に据え、欧州的な暗さを排してすっきり垢抜けたアレンジで聴かせるメロディック・ロックというスタイルを更に押し進めつつも、ジャケットはお馴染みジェフリー・ギレスピーの手によるものですし、収録曲の中にはジャーマン・メタルらしい力強さを伴って疾走する⑨⑪のようなスピード・ナンバーもあり。またそれらを歌うドロ姐さんの歌唱も女ロニー然とした力感溢れるもので、少なくともこの時点では出している音にしろルックスにしろ、90年代に発表されたソロ作品群ほどフェミニンな方向へは寄せられていません。特にHRのエッジとキャッチーなポップ・センスを巧みに融合させた⑤なんて、この時期(過渡期)ならではの魅力を宿した逸品ですよ。バラード⑥における歌唱も素晴らしい。
DOROの門出を祝うに相応しい充実作。
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