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Shehili / MYRATH
火薬バカ一代 ★★★ (2019-06-27 23:32:13)
飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進中のMYRATHが'19年に発表した最新作。日本でも着実に人気が高まっているようで、バンド側もそれを意識してか今回はボーナス・トラックで日本語詞にもチャレンジしてくれているという。嬉しいじゃありませんか。
母国チュニジアの芳醇な民族音楽のエッセンスをふんだんに取り入れ、テクニカルでドラマティックなプログレ・メタルと大胆に交配してみせたサウンドは、オリエンタルな個性を分かり易く打ち出せる反面、曲作りの幅を広げ難く、作を重ねる毎にマンネリ化していく危険性も孕んだ諸刃の剣。…のようにも思うのですが、情熱的に歌い上げるVo、官能的なリードGと、積極活用されるヴァイオリンやチュニジアの伝統楽器によって奏でられる、アラビアンなメロディの濃厚な哀愁はしっかりと保持する一方で、リフにリズムに、これまで以上にメタリックなアグレッションも強調することで新風が吹き込まれた収録曲の充実っぷりを聴く限り、まだまだMYRATHにその心配は無用な模様。
果てしなく広がる砂漠の海を幻視する序曲①を皮切りに、妖し気な曲線美を宿す③、硬質なリフ&リズムとしなやかなメロディが組み合わせされた⑥、パワー・メタリックな⑦、ザヘル・ゾルガディの色気溢れる歌声に聴き惚れる甘美な⑧、本編ラストを締め括るエキゾチック&シンフォニックな⑫等、絢爛と繰り広げられる音世界に捨て曲の類は一切なし。中でも個人的にお薦めは⑤でして、エキゾチックな旋律美とプログレ・メタリックな構築美、おまけにライブ映えしそうなノリの良さまで兼ね備えた隙のなさに痺れましたね。
上昇気流に乗るバンドの勢いや雰囲気の良さが、しかと反映された力作ではないでしょうか。
→同意