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Free with Pyg / PYG
火薬バカ一代 ★★★ (2019-03-31 10:42:37)
内田裕也に続いてショーケンまで死んでしまった。世代的に、この人に関しては完全にドラマや映画で見る「俳優」という認識で、ミュージシャンとしての経歴については殆どフォローせずに来てしまった身ゆえ、初めて本作を聴いた時はそりゃもう驚きました。
萩原健一(Vo)、沢田研二(Vo)、岸部一徳(当時は修三/B)、大野克夫(G)、井上堯之(Key)ら、知名度も実力も抜群な面子により結成されたスーパーバンドながら、音楽シーンが端境期を迎えていた当時は正当に評価されず短命に終わってしまったPYG。本作は彼らが'71年に田園コロシアムで行った野外ライブの模様を収めた2枚組実況録音盤です。
洋楽バンドのカヴァーが大半を占め、オリジナル曲はオマケ程度の扱いのセットリストや、出している音は本格派だけどジュリーのMCは歌謡ショー風…という取り合わせに当初こそ戸惑ったものの、邦楽HR創世記の試行錯誤をドキュメンタリックに伝えてくれるこうした作りも本作の大きな魅力。ジョン・ポール・ジョーンズが認めた岸部のBを始め、卓越した演奏力を誇る楽器陣と観客の悲鳴のような声援(まさにアイドル)をバックに、ジュリーが声を振り絞る息も絶え絶えな“SPEED KING”!ショーケンが出鱈目英語でシャウトする“悪魔を憐れむ歌”!と、人によっちゃ噴飯ものかもしれませんが、個人的には「でも演るんだよ!」という前のめりな姿勢と、荒々しい熱気が迸るこれらのカヴァーを嫌えるわけがねえ。ショーケンの後者なんて一周回って「寧ろこれがロック」と。Disc-2のオリジナルの名曲③における彼の全身全霊を込めたシャウトにも魂を持っていかれる思いですよ。
萩原健一を単なる「お騒がせ芸能人」と認識している人に聴かせて回りたい1枚でした。合掌。

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