この曲を聴け! 

Kiske / MICHAEL KISKE
火薬バカ一代 ★★★ (2018-03-29 23:24:10)
マイケル・キスクのHELLOWEEN合流を祝って、今更彼氏のソロ・アルバムを落穂拾い。
キスクと言えば、誰よりも上手くメタルを歌うが、そもそもメタルを歌うことはあんまり好まないという、グラハムのやっさんに通じるアンビバレンツな性質の持ち主。それゆえHELLOWEEN脱退以降はHR/HMと距離を置こうとする姿勢を、特にソロ・アルバムにおいては鮮明に打ち出していて、それは'06年発表のこの3rdソロ・アルバムでも変わっていません。疾走ナンバーは勿論のこと、エレキGすら殆ど聴こえてこない本作は、リラックスした伸びやかな「歌」と、アコギによって奏でられる人肌の温もりを湛えた「メロディ」が主役を務める、ハート・ウォーミングなサウンドが追求されています。
正直、もし発表当時にこのアルバムを聴いていたならば「またこの路線か…」と溜息の一つも漏らしたことは想像に難くありません。しかし頑なだったキスクの心情にゆっくりと雪解けの季節が訪れ、今ではPUMPKINS UNITEDの一員としてライブを重ね、メディアのインタビューに応じ、HELLOWEENのメンバー達と共に笑顔で写真に収まる彼氏の姿に感無量な現在となっちゃ、素直に本作の収録曲の質の高さに酔いしれることが出来るという。
徐々に熱を帯びていく哀愁にグッとくる④、不意に響くバイオリンの調べが胸を打つ⑤や、エレキGによるソロもフィーチュアされた爽やかな⑪、意外な程ダンディな歌声に聴き惚れるエルヴィス・プレスリーへの敬意溢れるカヴァー⑫といった楽曲おけるキスクの歌唱は、無理なく自然体で、そして実にエモーショナル。
本作に対する己の過小評価を猛省しつつ、今後は「このアルバムを聴け!」と、宣伝行為に邁進する決意を固めないわけにはいかない力作です。

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