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ENGRAVED / ANTHEM
火薬バカ一代 ★★★ (2017-08-25 00:43:05)
絶対的支柱である柴田直人(B)と、昨今HR/HMシーンでも猛威を振るうガンとの闘病という一大事を乗り越えて、’17年にANTHEMが発表した新作。そうした緊急事態がレコーディング作業にどの程度影響を及ぼしたかは知る由もありませんが、本作のクレジットを確認して先ず吃驚するのが、収録曲の半数近くを清水昭男(G)が手掛けている点。復活前を含めてもこんなことなかった!(よね?)ってな前代未聞の大事件ですが、それでいて聴き終えてみると「やっぱANTHEM最高」という会心の仕上がりになっているのですから2度吃驚ですよ。
いやこれまだって清水は曲作りにタッチしてましたし、多数の有名アーティストに楽曲提供をして来た作曲家としての実力に疑問符なんぞ付きようもありません。しかしこうしてANTHEMの重責をこれまで以上に柴田の親分と分け合っているのを目撃すると、「アラ~、ANTHEMさん家の昭男君が立派になっちゃってまぁ!」と、正月ぐらいにしか顔を合わせない親戚のオバちゃんよろしく肩をバシバシ叩きたくなるという(なんだそりゃ)。特に哀愁が絶妙に効いたコーラスが秀逸な⑤は本作のハイライトの一つではないか?と。
そして勿論、柴田御大もしっかりと存在感を主張しています。歯切れ良くキャッチーに躍動する①、哀愁のHRナンバー②、田丸勇(Ds)のタイトなリズム・ワークが冴える疾走ナンバー③という、破壊力よりも機動力(メロディ)重視という、アルバムの完成度と方向性を保証する頭3曲の畳み掛けは「さすが柴田直人!」と喝采を上げる出来栄え。またそれらの楽曲において、メタリックな熱量は十二分に保ちつつも、青筋は幾分控えめに伸びやかな歌い回しを披露する森川之雄(Vo)の熱唱も本編に新鮮な風を吹き込んでくれていています。
各メンバーのより一層の成長で、ANTHEMが後10年は余裕で戦えることを証明した力作。

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