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Oracle / Oracle
火薬バカ一代 ★★★ (2016-11-15 00:30:55)
イギリスとスペインが領有権を巡って対立する、イベリア半島ジブラルタル(…と聞くと真っ先に『風雲!たけし城』が思い浮かぶオッサン脳)出身の4人組が残した唯一作。
初めてこのバンドの存在を知った時は「あんなヨーロッパの端っこでも頑張ってHR/HMを演ってるバンドがいるのか。健気だなぁ」と、メンバーが耳にしたら「極東の島国の人間に言われたかねぇYO!」とムッとするであろう感想を漏らしたものですが、その健気さを、そのまんまメロディに転化してしまったかのような(?)、PRAYING MANTIS、INCUBUS、HERITAGEといったバンドを彷彿とさせる、憂愁と美旋律満載のジブラルタル・ロック・サウンドに衝撃を受けた次第。
バブル華やかなりし’89年作品にも関わらず比較対象がNWOBHM勢であることからもお察しの通り、音質面等からは垢抜けなさが匂い立つものの、個人的には線の細さが逆にメロディの哀愁っぷりを引き立てるVo、テクと表現力を併せ持った腕利きG、専任メンバー不在でもアレンジ上重要な役割を果たすKeyとが、リリカルに泣きまくる収録曲の素朴な佇まいに終始郷愁を刺激されまくり。メロディアスに歌うGが疾走する②、泣きを孕んだ声質のシンガーとエモーショナルなGが冴える④、ポップ・センスも活かされたキャッチーな⑤、バンドの出自を伺わせるスパニッシュ・タッチのバラード⑥etc. …中でもラストに配され、聴き手を涙の海で溺死させる勢いの名曲⑨の劇的さは相当に凶悪ですよ。
スペイン国内のみでリリースされたというオリジナルLPが、マニアの間でプレミア高値で取引されていたというのも得心が行く、埋もれてしまった名盤ですね。
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