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Lovedrive / SCORPIONS
火薬バカ一代 ★★★ (2016-10-22 00:08:32)
ヒプノシスの手掛けた『遊星からの物体X』風アートワークが「女性蔑視」との批判に晒され、アメリカでは差し替え騒ぎに発展。しかし同時にチャート50位台にランクインする好リアクションも獲得し、同地進出への足掛かりともなった’79年発表の6thアルバム。
ウリの後任は旧知の仲だったマティアス・ヤプス(G)に決定。でもレコーディング中に経験不足が露呈したことから、当時ちょうど暇してたマイケル・シェンカーのヘルプも仰いでアルバムは完成(マイケルは5曲でプレイしてる)。そのままツアーに出たまでは良かったが、ここで神の失踪癖が再発。バンドは慌ててマティアスを呼び戻してツアーを続行…と、制作の舞台裏は相当にドタバタしていたご様子。実際、ウリが去って本編の泣きメロ含有量は激減。更にOPナンバー①のパンチの弱さや、レゲエ調の⑥があったりと、初聴時の感想は「変わってしまったのね…」と、あまり芳しいものではありませんでした。
しかしリピート再生するうちに印象は大きく変化してきます。ウェット感が減ってドライさが増したことで、これまで以上にルドルフ・シェンカー(G)のカミソリ・カッティングの威力がダイレクトに伝わって来るようになりましたし、切れ味全開の②⑤⑦で要所をアグレッシブに締めつつ、哀愁が滲む③、シェンカーのGが冴え渡るインスト曲④といったメロディアスな楽曲(レゲエ調の⑥もメロディは美味)を経て、ドラマティックな名曲⑧にて締め括られる本作の完成度には、制作時の混乱が影を落とした様子は見受けられません。
限定地域にピンポイントで訴えかけた従来のダークネスや情念の迸りを抑え、より広範囲な地域&リスナーにアピールすべく、音楽性を垢抜けさせ始めた蠍団の契機となった1枚ですね。

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