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The Astonishing / DREAM THEATER
失恋船長 ★★★ (2016-02-22 13:35:55)
ヘヴィメタルにさほど興味のない人間が手にしたものがただでワタクシの元に転がってきました。個人的にドリームシアターはアーティスティック過ぎて苦手な部類に入るので真面目に聴いた事がない。過去に1st、2ndを聴いた事はあるが上手過ぎて笑った、それが素直な感想だ。フックに富んだメロディ、躍動感のある多彩なリズムプレイ、バカテクという死語を引用したくなる緻密さに10代の若造には難解に映りスルー、もっとシンプルで分かりやすいものがイイと今なら恥ずかしい感覚だが、当時はそれでお終い。ヘヴィメタルとはスピード・パワー・メロディ、そして即効性のある分かり易さ、それが大切な人にとってドリームシアターは取っつき易いバンドではないと思っているし、上記のアルバム以外聴いた事のない門外漢も甚だしいワタクシですが、今作の持つバンドとしての力量には驚かされました。
まずペトルーシのギターが凄い、以前まで感じていた、わしゃ弾けまっせと言わんばかりに延々と技巧を駆使した弾きまくりを押さえ、メロディ最優先の姿勢が強く感じられる。ロック、メタル、フュージョン、多彩な音楽性に裏打ちされた盤石のテクニックを駆使しつつ高揚感のあるメロディを随所に導入、その心地よさを解放する技術力の高さは、ここまで分かりやすくまとめても、さりげなくテクニカルなプレイを盛り込み、ギターを弾いていたものとしてはワクワクとさせられます。各曲で存在感を発揮しているのはペトルーシに限らず、ソリッドかつ軽快なドラミングを軸に自由奔放に打ち鳴らされているような錯覚するら覚える躍動感溢れるマイク・マンジーニのドラム、シンフォニックなオーケストレーションを生かしたサウンドの生命線となるキーボード、クリアな音像の中で伸び伸びと各自がプレイし、限られた枠組みの中でメンバー全員がイマジネーションの限りと尽くしたとも思える技に唸りましたね。
ジョーダン・ルーデス&ペトルーシが絡む辺りなんてゾクゾクするもんね、超高速ユニゾンは勿論、スリリングなソロパートからオーケストラパートへの移行なんてRUSH辺りがやるお得意のアレンジだし彼等もそれらを踏襲してきた、そう言ったアレンジセンスがバンドの肝で、かつてバンド仲間の先輩から「ドリームシアターの凄さは『インプロと思わせるパートにも徹底した構築美がある』そんな事を言われたなぁと思いだしました。
2時間10分、フワッとした優美なメロディ、唄が中心と言える作風、激烈な重さも即効性も薄い、一曲における抑揚や深みはあるが、アルバムを通して聴くとダレる。ましてやそれがプレイヤーでなければ顕著に感じるでしょう。普段ぺシャンぺシャンに音の悪いNWOBHMやマイナー様式美サウンドばかり聴いているワタクシには高尚すぎるサウンドなんですが実は聴きこむほどに音楽的な深みと、進むにつれてテンションが高まる作風を前にスゲェバンドだなぁと改めて気付かせてもらった一枚でしたね。全然興味の無かったドリームシアターにここまで引き寄せられるとは、くだらない先入観を持たずフラットな気分で向き合うと見えてくる景色も違うもの、いくつになっても勉強ですね。目からウロコやったなぁ。ドリームシアターが苦手な理由には、本当は凄い事が出来るのに、敢えて分かりやすい曲を演じるというのが少々鼻につくなぁとね、でも今作はそのあざとさを感じさせないのが一番のポイントでした。誰でも出来ないもんね、この作風わ。
それに売る気ないもん、2時間10分で3000円超え、売る為ならもっとシンプルにやるもんね。その姿勢が一番のメタルだ(笑)
フーガの技巧はバッハの最高傑作。主題となるメロディを聴かせ、次に旋律を絡ませ緻密に編み込んでいく。聞き込むほどに、その旋律がほどけ耳を刺激、単純に走るとか音がデカいだのキャッチーだのではない、音楽的偏差値の高さというのを聴き手に問いかけている。リスナーオンリーには厳しいだろう。
JPのノストラダムス論争を思い出したな。
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