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Tragic Idol / PARADISE LOST
ハルディン ★★★ (2015-10-17 23:49:39)
多くのファンを唸らせたセルフタイトル作以降徐々に原点回帰の色を明確に示してきた彼らの12thで、何とも象徴的なデザインのジャケが目を惹く。引く手数多の名手エイドリアン・アーランドソン(AT THE GATES, CRADLE OF FILTH等)が新たなドラマーとして加入している。

ひたすら陰々滅々たるムードで深淵に誘い込むスローな曲調のドゥーミィーな音像は初期の名作「Icon」を思わせる作風だが、メランコリックなメロディを軸に捉えた4や8のように時折「Draconian Times」を彷彿させるところも。基本はスロー~ミドル中心ではあるが中盤ではいくぶんテンポアップして攻めの姿勢に転じ、流れにしっかりとメリハリを持たせているのもいい。ニックのヴォーカルは中期の頃の力強い濁声がメインで、儚げでメロウなクリーンVoも頻度こそは少ないものの効果的に配されている。重厚でオーガニックな質感が特徴的なイェンス・ボグレンによるサウンドもお墨付きの好クオリティ。

壮麗なストリングス類は殆ど使用せず女性Voのコーラスもない、シンプルに分厚く引きずるような重量感のあるGリフとグレッグが紡ぎだす扇情的なフレージングのGメロディで構築される、シンフォ/ヘヴィ系のフィメールVoフロントが主流になった今となっては珍しい原初的なスタイルだが派手なギミックに逃げない真っ向勝負の姿勢から滲む円熟味と説得力のあるアレンジセンスはすばらしく、ゴシック・メタルのパイオニアたる貫禄がある。初~中期のファンならば必聴の傑作。

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