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Perfect Timing / MCAULEY SCHENKER GROUP
失恋船長 ★★ (2015-03-20 14:02:26)
幻のラインナップ、スーパーロック84から3年、名義も変わり国内のHM/HRファンの間では期待の高まった中でリリースされたアルバム。新メンバー、ロビンの唄を中心にLAメタル全盛の時代を意識し迎合した一枚(プロデューサーはアンディ・ジョーンズだもんねコーラスの重ね方もモロにバブリー)僕はギタリスなので、普段はやらないギタリスト目線でコメントすると曲云々よりも、彼らしさがなくなった事が一番の問題点でしょう。

UFO時代に魅せたギブソンのフライングVにマーシャルのアンプを組み合わせた独特の音色(ワウをかませ歪ませた)ゆったりと大きくヴィブラードさせたフレーズには情感がこもり歌心溢れるマイケル節の確立を果たします、スムーズに流れる運指から導かれるメロデイックな泣きのフレーズに多くのギタリストが魅了されました。MSG時代に入り、叙情的なHM/HRナンバーの中にスリリングなソロとますます磨きの掛った湿り気を帯びたメロディを導入、その長さと鬼気迫るプレイは唯一無二の存在感を醸し出し、独特のトーンと世界観が見事に合致したものとなりました。

グラハムと組んだ時代は歪みを押さえた生々しい音で勝負、その確実なテクニックを駆使し、よりスリルとマイケルならではのナイーブなニュアンスを押さえたフレーズと劇的な展開で多くのギタリストを魅了していきました。で今作なんですが、THE80年代中期のLAメタル万歳なスタイルと音色を導入、お得意のフレージングは影を潜め、リフワークにおけるマイケル節は大幅に減退(ソロも短いしアンプもマーシャルじゃないしね)とマイケル派のギタリストにとっては不満の一途となるのでしょう。

どんなに時代に迎合しコマーシャルリズムを高めようが、あのトーンとお得意のフレーズがあればマイケルファンからの不評も抑えれたんでしょうがね(ちなみに次作でも時代を意識しピッキングハーニクスを多用し新たなる局面を迎えます)。基本僕はこの目線でコメントしないので、哀愁味溢れる歌モノHM/HRとして聴くと実に魅力的に映ります。名義も変わりマイケル一人の乗り物ではないバンドサウンドへとシフトする事が3年のブランクを経て時代の波に乗り遅れる事のないよう目標を定め、打ち出したのがトレンドな音だったんだと思います。

今でこそギター目線と言うモザイクを外して見聞きできますが、当時は完全にOUT、シャラシャラとした軽めのサウンドを前にアメリカンナイズドと売れたい気持ちが前面に出た作風に落胆しました(同年にリリースされた時代の寵児となるホワイトスネイクとは真逆な方向性、英国らしい高貴なムードと重厚さを損なわないアレンジで、アメリカンマーケットを制覇したカヴァーデイルは素晴らしい)。じゃなきゃマイケルがヴィジュアルを気にしてつけ毛のロン毛にする必要ないもんね、でもそれが当時のメジャーシーンでは当たり前の事ですからね。今となれば時代の流れに合わせ、ポップフィーリングを極限まで高めシンプルさと小奇麗に装飾を纏ったAOR風HM/HRサウンドとして楽しめるから不思議なものです。

今作における賛否を分ける最大の要因はリスナーオンリーとプレイヤーとの差が出るんだと思いますよ。ギタリストのみならずマイケルにほれ込んだ人ならもっと欲しいもんなぁフライングV。時代は1987年、わざわざドイツに拠点を移しメジャーシーンに殴り込みを掛けた一枚がアメリカン市場を狙ったコマーシャルリズム溢れる方向性へ完全に舵を切り、マイケル自らギターを封印した実に実験的な一枚(お兄さんのいたスコーピオンズのような欧州風味の泣きを残したソフト路線よりもカラッと明るめだし、英国人はいるが彼らは方向性にほぼ影響を与えていない)。アンディ・ジョーンズは期待に応えエエ仕事をしましたよ。

後年、どう言う訳か逆説的に今作を持ち上げる人が増えました。リリース時の悪評もどうかと思いますが、この手の歌モノロックを愛するものとして、一つだけ言える事は、マイケル・シェンカーのバンドでなければ、賛否もないだろうし、そもそも話題に上るほどのクオリティではない、それが全てですね。

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