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Whitesnake / WHITESNAKE
失恋船長 ★★★ (2015-02-28 15:20:53)
このアルバムがリリースされた時期はまさに北米マーケットを軸に世界を席巻する勢いでHM/HRシーンは膨れがり大爆発を起こした時期に世に出たのが今作。1980年リリースの「READY AN' WILLING」あたりから英国風の古めかしいスタイルを残しつつもアメリカンマーケットを意識した方向性へシフトチェンジしていたのは明白ですが、大きな成功を得られなかった彼ら、マニアの間では名作と評される「SLIDE IT IN」も、悲願のアメリカ市場開拓を目指し、あそこまで狙ったのに全然話題にならずも、今作では見事に成功を収めます。コンパクトな作風が増えだした80年代初頭の中でイマイチ地味な扱いを受けるアルバム「SAINTS & SINNERS」から2曲もリメイクしているように、方向性はあの時代から決まっています、どこに焦点を置き、どの感覚で音に触れるかでアメリカンナイズされたという妄言に繋がるのでしょうが、逆にこの時代背景そのものがアメリカンナイズされまくっているので、どんなバンドも大なり小なりである。だからこそメタリカやメガデスのようなコアなスタイルを軸に、売れるとは違うベクトルを放つ反体制な音楽に目が向けられたのでしょうね。
実際にピュアなメタルサウンドを叩きつける彼らの存在は時代の反動となり、やがてはシーンのメインストリームに押し上げられ、やはりアメリカンナイズという大きな渦に飲み込まれる姿を見たものです。1987年L.Aメタルと言う視覚的にも派手なファッションを取り入れ商業的にショーアップされたHM/HRスタイルが音楽市場を開拓する姿は目まぐるしいものでした。長年プロデューサーを務めていたマーティン・バーチと手を切り新たにマイク・ストーンを迎え、本格的に北米マーケットに乗り込むべく、髪も金髪に染め上げたカヴァーディルのやる気とシーンの活性化に呼応するように音楽性も更にリニューアル、方向性の違いや対立するメンバー脱退に怪我やプロデューサーの度重なる変更、最終的に必殺仕事人キース・オルセンを迎えリリースされた難産極まりなかったと言われる一枚。それゆえか比類なき完成度の高さを誇り、ZEPのような古典的なサウンドにL.A風の豪華なスタイルを掛け合わせ、ダイナミックにまとめ上げた今作に凡庸な曲など見当たらず、③のような曲がチャートに喰い込んだようにアメリカ制覇を目指し売れるべくして売れたアルバムでしょう。
リメイクされた①④もオリジナルアルバムの中では逆に浮いていた感もあり(リメイクから始めるのも凄い)、今作に収まるのは必然的とも思え、改めて過去の作品群を再評価させたかったのもカヴァーデイルの心意気でしょう。パープル解散後、ホワイトブルースに根差した、暗がりのバーが似合う正調英国産ブルースロック路線から比べたら何もかもが違い、時系列で聴けばルックス同様の変貌ぶりに驚くでしょうが、そんな事はどうでも良いくらいに完成された時代の寵児となるヘヴィなロックアルバムです。もしブルース路線ならジョン・サイクスのギターの音は合わないしね。
今は2015年、平成も20年をゆうに過ぎました、このご時世にロック歴を自慢するような封建的な体質でも持ち合わせていない限り時代を代表した一枚と心に響くでしょうね。若い人にこそ是非とも聴いて欲しい一品です。
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