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Esoteric Warfare / MAYHEM
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2014-06-03 23:15:08)
2014年発表の5th。
Euronymousを失って以来、メインのコンポーザーであり続けてきたギタリスト、Blasphemerが抜けてしまうというまさかの事態が発生し、今後どうなるのか非常に不安でしたが…NIDINGIRやTHE KONSORTIUMに在籍し、1349やGORGOROTHのライブメンバーも務めてきたTeloch氏を迎え、こうして新譜を出してくれました。その日本盤が今日発売され、取り合えず4、5回聴いてみての感想です。
今までのアルバムを例に出すなら、「Chimera」が最も近い作品でしょうか。メンバーのスキルの高さが生み出す圧倒的な暴虐性と、暴力的な衝動性だけではない、高い構築性を有した、エクストリームメタルとしてごく真っ当に超高品質な作風。前作「Ordo ad Chao」ではプリミティブを変な方向に解釈したような妙な音質が賛否あった(私は駄目でした)んですが、今作は音質もちゃんと迫力があって良いです。
そしてギタリストが変わっても、アンサンブルの壮絶さは変わりませんね。特にドラムとリフの絡みは達人同士が切り結ぶような緊張感。Hellhammerのドラミングは凄まじいなんて言葉では言い表せません。メタルに全く興味ない人でも「すげえ…」となるのでは。今作は「Chimera」よりもより「膨らみ」が感じられるような音作りになっているせいもあって、暴虐の渦に頭から飲み込まれるような迫力を感じました。
Attilaのヴォーカルも、「呪詛的」というレベルを遥かに超えた表現力を見せ付けてくれますね。声帯が軋るような、ホイッスルを思い切り歪めた様な金切り声は、鬱ブラ的な感情ではなく、人間ではない何かの鳴き声のようにも聴こえます。低音もよりゲロ度に磨きが掛かった印象。一部では「声」というものが融解して別種の何かになっているような、これまた非人間的なヴォーカルワークが聴けます。
ただ、メンバーのスキルや経験によって、メタルアルバムとして素晴らしいものに仕上がってるとは思うものの、やはり楽曲面ではメイン作曲家が抜けた大きさも感じてしまうんですが…。特にドゥーミーに進行する部分に若干ダレを感じるため、スロー~ミドルなパートの緊張感は「Chimera」アルバムの方が勝っているように感じたり。まあ、この辺りは聴き込むと印象が変わってくるのかもしれませんが。
後は歌詞ですが…1stでブラックメタルの原風景を植え付け、2ndでおそらく第三次世界大戦及びポストウォーのコンセプトを緻密に描き、3rdではサイコな世界観を描いてきたように思うんですが…今作のワードを拾っていくと「ケムトレイル」「アセンション」「第四種接近遭遇」「Milab (軍によるアブダクション)」等、疑似科学的なモチーフが頻出。…MAYHEMってこんなバンドだったっけ?英語に堪能でない私が言うのも説得力がないですけど、正直MAYHEMにこういうガジェットを持ち込んで欲しくなかったなぁ…。「Throne of Time」で描かれるディストピア感とかは、今ひとつシリアスさに欠けるように感じてしまう。
…と言っても歌詞が気になるくらい好きなバンドという事でもあるし、やはりベテラン…というか達人が集まり、それをエクストリーム方向に指向性を持たせてぶっ放したような音は非常にかっこいい。今の時点でMAYHEMの作品で一番好きかどうか聞かれたら「否」ですけど、まあ☆3つ付けるのに吝かではないです(笑)。
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