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Crusader / SAXON
失恋船長 ★★★ (2014-05-13 18:00:33)
十字軍をテーマに作られたアルバムなんですが、重そうなテーマの割にコマーシャル性の高い哀愁も薄目なサウンドとポップセンスを前面に押し出した作風にバイカーズスタイルの熱い男気サウンドは後退、リアルタイムで順を追って聴いてきたファンにとっては複雑なものもあったと思いますが、ある程度前作でスケールの大きいメジャー感のある楽曲を提示していたので、それなりの覚悟は出来ていたので個人的にはさほど驚いていません。まったくもって走らないSAXONを前にNWOBHMの先駆者としての威厳もなくなり、若かりし頃に聴かされたら僕も相当な悪態をついたでしょうが、このアルバムを手にしたのは、20代からなんでメジャー感のあるサウンドに円熟味の演奏が独特の世界観を醸し出してんなぁと感じましたね。ポール・クィンとオリバーのツインギターよ、嘆きも有るでしょうがパワフルな昨今の彼らとは違うシャレオツま一枚を聴き当時のシーンを振り返るのも一興でしょう。本気のファンに刺されそうですがNWOBHMの王者の座を捨て新たなるフィールドで勝負した彼らの気概は大いに買いなんですよね。ビフのメロディアスな歌唱も好きなんですね。
でも惜しむらくは、いくら速い曲が無いからといってSWEETのカヴァーでお茶を濁すのはチョイと違うような気もします、速い曲ってのは確かに魅力だけど、それはアクション映画の銃撃戦や格闘シーンみたいなもの、本筋のストーリーが良くないとねダメですよ。とってつけたカヴァーはアルバムの方向性を見紛う事になりかねない、個人的には完全に蛇足です。SAXONが好き嫌い以前に、単純にキャッチーで速い曲があればいいって事なんでね、そりゃあきませんわ。アメリカンナイズド云々以前のお話です。完全にヤラされている感がハンパないです。
時代は80年代中期、メイデンは86年に『Somewhere in Time』をプリーストは『Turbo』をオジーは『The Ultimate Sin』をと、進むべき道がきまっていた時代ですよ。その時代を見据えたアメリカン指向の今作でも、そこはかとなく漂う英国気質を嗅ぎとれるバンドサウンドに意地を垣間見ましたね。
リリース時、権威ある商業誌にケチョンケチョンに酷評されたのが不人気の一因なんでしょうが、あれから30年経ち流石に当時の論評をそのまま受け売り出来るほどピュアな性格は持ち合わせていないし、オジサンなんでそれなりに酸いも甘いも噛みしめたのでね。
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