この曲を聴け! 

The Essential Collection 1995-2005 / TEN
ムッチー(2012-06-28 23:26:56)
2005年にリリースされた、TENの2枚組の再録ベストアルバムです。
一枚目にはロックソング、二枚目にはバラードソングという構成です。
自分は既に全アルバムを所有していましたが,リレコされているということで興味がわき,買いました。
クリス・フランシスがヴィニーのプレイした数々の名ギターソロをどう調理するか、
そしてなにより、格段に深みを増したゲイリーの声で過去の名曲を聴けるということを楽しみに。

しかし、残念ながら、これは、その期待には応えてくれないアルバムでした。
少なくとも,既存のファンが,再録された曲の姿を大きな目当てとして買う分には,納得がいかない。
まず、オリジナルとの大きな違いとして挙げられるのは、音質です。
生々しいアコギのサウンドは良いですよ、でもそれ以外は酷いと思います。
ドンシャリで安っぽい全体の音像,潰れ気味のリズムギター,軽~いドラム,そして極めつけはヴォーカル。
リヴァーヴというよりも、こりゃエコー?それとも山びこ?、が、しつこ過ぎるし、
「スゥッ!!!」というブレスの音も一々デカ過ぎて、集中を削がれます…。

しかも、個人的に注目していたリレコも、ねぇ…。
クリスはまぁ,頑張ってますよ。そりゃ,ヴィニーの残したプレイ以上に魅力的とまではいきませんけど,
彼なりにアレンジしてますし、その違いは面白いです。
でも一番期待していたゲイリーのヴォーカルは、以前のテイクそのままでした…。
リード,バッキングともに,一部,抜いたり継ぎ足したりと編集はしてますが,明らかにそのまんま。
これには大いにガッカリしてしまいました。
上記の事柄から、このベストアルバムには、テキトーとまではいわないまでも、
そこまでこだわって製作したわけではないんだなと感じました。

楽曲自体のアレンジは、曲によって、けっこう変えていたり、ほとんど変わってなかったり。
前年に出したばかりの『RETURN TO EVERMORE』からの3曲なんて、
既にクリスもいたし、あまり再録の意味がない気もしますね。
個人的に,ヘヴィさを増しメリハリのついた"Ten Fathoms Deep",アコギのオブリが秀逸な"Virtual Reality",
厚いコーラスを廃しギターソロを拡張してストレートに伝わる"Rainbow In The Dark"、
Gソロを入れずにピアノメロディを強調してより繊細になった"Valentine"などはアリ。
これらの曲は、良いアレンジで、楽曲の、また違う魅力を引き出していると思います。
他は、正直言って、イマイチだったりひどかったり…。
やっぱり、オリジナルヴァージョンの方が思い入れもあるし、ずっと良いと思うし、
自分の中で曲のイメージが壊れてしまわないよう,新verはあまり聴かないようにしてる所もあります。

と、ここまで、オリジナルを散々聴いてきたファンの側からの感想。
一般的には、ベストアルバムというのは、新規ファンを開拓するためにあるわけですし、
そういう意味では、入門編としてこのアルバムから、というケースはよくあるでしょう。
選曲自体は悪いわけではないし、その選択は間違ってはないと思います。
でもやはり自分としては、できたらオリジナルアルバムから入ってほしいなぁと思うわけです。
まず、オリジナルの方が素晴らしいからというのもありますが、
それぞれのアルバムごとにある、統一された空気・音質、それに曲順。
そういうのも含めて楽しんで、それが愛着となっていくと思うので。
まぁ、それは、あくまでも、ベストアルバムが好きではない自分からの意見なのですが。
とにかく、TENのアルバムにはハズレはないと思うし、よく中古で安価で売っているので、
まず一枚買ってみて、気に入ったら他のにも手を出すという流れを勧めたいですね。

違うヴァージョンも聴いてみたいからこのベストアルバムも欲しいというファンの方は、
よっぽど思い入れが強すぎて、違和感が大きく受け入れられないということがなければ、
これはこれで、少なからず楽しめると思いますよ。
もちろん,自分も買って後悔はしてませんよ。また新鮮な気持ちで楽しめるという面もありますしね。

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