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Somewhere in Time / IRON MAIDEN
クーカイ ★★ (2002-09-09 00:32:00)
'86年発表。スタジオ作として6作目。
本作はコンセプト・アルバムではないのだが、作品の背景に"近未来を感じさせるHMの創出"という意識が働いている。
まず、アルバムジャケット。デレク=リッグスによるイラストは『BLADE RUNNER』のイメージをエディの世界に置き換えたものだ。『BLADE~』はハリソン=フォード主演のSFハードボイルド映画だが、この映画は近未来の描写において現在に至るまで他者の追随を許さない名作である(監督はリドリー=スコット。原作はフィリップ=K=ディック)。
実は'80年代半ば頃というのは、SF界に端を発して社会現象ともなった一つの動きがあった。"サイバーパンク運動"である。SF作家でいうとウィリアム=ギブスン、ブルース=スターリングなどが挙げられ、日本では漫画家の大友克洋が傑作『AKIRA』で体現していた。
本作が成立した背景には以上に述べたようなポップカルチャーの動きがあった。
そして音である。本作ではシンセ・ギターが導入されているが、実のところその効果というのは目立ったものではない。それよりも注意されるのは、一曲一曲の時間が長くなっていることである。最も短い⑦でも4分56秒。全8曲の収録曲のうち7分以上の曲が3曲もある。しかもそれらの楽曲は全く長さを感じずに聴けるのだ。その理由としては、魅力的なリフとメロディ、複雑化した楽曲構造が挙げられる。要するにHMの文脈の中である種プログレッシヴな手法を導入したことにより、従来からバンドが持っていたメロディアスな側面を強くアピールすることに成功したのである(この方法論の究極形がDREAM THEATERの2ndである)。
以上に挙げた2点から、本作はHMの進化の行く末を提示した歴史的傑作と位置付けられよう。
ま、そんな堅苦しいことを考えなくても、十二分に楽しんで聴ける。
何より捨て曲が無いし、④は超名曲である。個人的にはIRON MAIDENの全スタジオ作の中で3本の指に入っていると思う(他の2枚は7thと3rd。ただし日によって多少入れ替わりあり)。

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