この曲を聴け!
BOB DYLAN
チョッパー ★★ (2009-10-02 13:32:00)
ご無沙汰してます。
最近ディランに大変な事が起こっています。なんと30年ぶりにアルバムが全米№1になったのです。
ベスト盤ではなくスタジオ・オリジナル・アルバムが、しかも2作連続で!これはまさに事件ですね。
これで最近ディランに興味を持った方も多いのかもしれない。・・と言う訳でそんな方の為にディランの
バイオグラフィを厚かましくも図々しくここに書いてみようと思います。「ボブ・ディランって興味あるけど
CDがたくさんあり過ぎてよくわからん・・」という貴兄の参考になればと思います。
まず、ディランは天才です。どれ位天才かと言うと、かのアインシュタインやピカソらと並んで「20世紀の
偉人」のひとりに数えられている程です。音楽界にのみ話を絞れば、特に欧米ではビートルズと並んで
語られるのはディランだけです。(そのビートルズもディランから大変な影響を受け、中でもジョン・
レノンはディランからの影響モロの曲をいくつも残し、ジョージ・ハリスンにいたっては共作、共演まで
しています。かたやディランはビートルズからの影響は殆ど受けていません。これはストーンズがビートルズ
の背中を追いかけていたのとは対象的です)
ディランのキャリアは50年に及び、加えて多作家なので大量のオリジナルアルバム
があり、それにライブ盤やカバー曲集、未発表曲集等を含めるとその作品は膨大な量になります。
ではディランは天才なのでそれらの作品すべてが素晴らしいのか?いいえ、決してそうではありません。
むしろ信じられない程つまらない曲も少なくありません。ディランはロック史に残る名曲をたくさん残しながら
一方で「捨て曲」も実はたくさんあるのです。普通のアーティストならそれらの「捨て曲」もプロデュースの力で
なんとか聞けるようにするのですが、ディランはそれをしません。本能のおもむくまま、むき出しのまま、
それがディランの個性であり天才であるのです。したがってオリジナルアルバムは曲毎のバラツキが大変に
激しいので特にディラン初心者にはあまりお薦め出来ません。月並みですがやはり手堅くベスト盤から入るのが
良いでしょう。と言ってもベスト盤も多数ありどれが良いのか?ここでロックを語る上において決して外せない
「ディラン最重要曲」をあげます。私の独断と偏見ではなく一般的最大公約数といえるだろう曲です。
「風に吹かれて」「くよくよするなよ」「激しい雨が降る」「時代は変わる」「悲しきベイブ」「サブタレニアン・
ホームシック・ブルース」「ミスター・タンブリンマン」「ラブ・マイナス・ゼロ」「ライク・ア・ローリング・
ストーン」「メンフィス・ブルース・アゲイン」「アイ・ウォント・ユー」「ジャスト・ライク・ア・ウーマン」
「ハリケーン」「ブルーにこんがらがって」
残念ながら既出のベスト盤はシングル曲中心の選曲がされているものが多くこれらすべてを収録している物は
ないようですが、出来るだけこれらをカバーしているのが良いでしょう。さらにもうひとつ重要なポイントは
歌詞です。特にディランの曲は歌詞が大変重要で、歌詞の意味を知ると知らないとでは曲の魅力が100倍以上
違いますのでぜひ訳詩付き国内盤を。(かく言う私も歌詞からハマったひとりです)
一般的には「ベスト・オブ・ボブ・ディランVOL.1」でまず入門し、「VOL.2」でハマるのが定番のようです。
この2枚まで聞ければ一応「ディラン聴いた」と言えるかと思います。
さらにオリジナルアルバムを聴いてみたいという方の為に簡単な略歴を。。
ディランは62年にフォークシンガーとしてデビューし、翌63年の2nd「フリーホイーリン」でブレイク。
65年5th「ブリンギング・イット・オールバック・ホーム」からロックへ転身。同年シングル「ライク・ア・
ローリング・ストーン」が初№1になり66年7th「ブロンド・オン・ブロンド」が最高傑作と呼ばれ第一次
黄金期を迎えるがこの年バイク事故で大怪我を負う。復帰後は2枚のカントリーアルバム等を作成。
転機は70年11th「ニューモーニング」。それまでの「曲の寄せ集め」的なアルバム作りから「アルバムを
アルバムとして聞かせる」作りに変わっていく。結果74年ザ・バンドとのコラボアルバム「プラネット・ウェイブズ」
が初№1を獲得すると75年「ブラッド・オン・ザ・トラックス」76年「デザイア」と3作連続№1となり第二次
黄金期を迎える。78年「ストリート・リーガル」からR&Bへのアプローチを見せ、79年にボーン・アゲイン・
クリスチャン宣言後に出したアルバム79年「スロー・トレイン・カミング」80年「セイブド」81年「ショット・
オブ・ラブ」は通称「ゴスペル3部作」と呼ばれてますがゴスペルというよりはディラン流R&Bで、当時は作品
自体の評価よりも、ただ「らしくない」という理由から不当に過小評価されそれを現在まで引きずっており、
むしろ今のR&B慣れした音楽ファンにこそ向いているのでは?と思われます。80年代に入るとディランは急速に
売れなくなり「ディラン暗黒時代」に入り迷走します。しかし97年「タイム・アウト・オブ・マインド」が
初のグラミーアルバム賞を獲得。01年「ラヴ・アンド・セフト」からのアメリカン・ルーツ・ミュージック
への方向転換が成功。04年「モダン・タイムス」09年「トゥゲザー・スルー・ライフ」と2作連続№1。
第三次黄金期を迎えています。
またディランには多数のライブアルバムがあります。ライブで曲をアレンジするのはどのアーティストもやる
事ですが、ディランはそれが極端で、時には「歌詞とタイトルが同じなだけのまったく別の曲」になっている
事も少なくなく、オリジナルより良くなっている事もあれば逆もあり、それがまたディランの別の楽しみ方に
なっています。さらに付け加えればディランには「ブートレッグシリーズ」という未発表音源集があり、実は
ボツテイクやボツ曲の方が公式盤より良い場合があるというのはファンの間では有名ですので参考までに。
ようするにディランはハマるととことん深く、楽しみ方も多岐に渡るのです。私もまだまだ途中です。
以上私なりのディラン紹介でした。少しでも参考にして頂けるとうれしいです。最後に嗜好別お薦めオリジナル
アルバムを紹介します。長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
「やっぱディランはフォークだよね」という方には・・
「フリーホイーリン」 62年の2nd。後の代表曲が詰まった出世作。
「アナザーサイド」 64年の4th。一日で録音した緊張感が溢れるフォーク時代のラスト作。
「カッコいいロックなディランがいいな」という方には・・
「追憶のハイウェイ61」65年6th。「ライク・ア・ローリング・ストーン」に代表されるぶちまけディラン。
「インフィデル」83年。マーク・ノップラープロデュースのソリッドロックなディラン。
「聴きやすいディランは?」という方には・・
「ストリート・リーガル」78年。女性バックボーカルを従えたディラン流R&B。曲の良さ、聴き易さはピカイチ!
「スロー・トレイン・カミング」79年。マーク・ノップラーのギターが渋い。全米3位。
「やっぱ№1アルバムが確実かな」という方には・・
「プラネット・ウェイブス」74年。ザ・バンドとのコラボ。
「ブラッド・オン・ザ・トラックス」75年。70年代の最高傑作と言われる。個人的にディランベスト1!
「デザイア」76年。バイオリンとエミルー・ハリス(vo)のバックが非常に効果的な最大のヒット作。
「ロック史的な代表作は?」という方には・・
「ブリンギング・イット・オールバック・ホーム」65年5th。フォークからロックへの過渡期。
「ブロンド・オン・ブロンド」66年7th。一般的に最高傑作と言われている。
(補足)第三次黄金期はお薦めからはずしています。理由はふたつ。ひとつは「アメリカン・ルーツ・ミュージック回帰」
というアルバム志向が日本人やディラン初心者に合う人が少ないのでは?と思った事。ふたつめはディランの声。ただで
さえディランのダミ声(ハマればこれも魅力的なのですが)に拒絶反応を起こす人が多いのに、特に「タイム・アウト・
オブ・マインド」以降は「ダミ声」を超えて「ガラガラ声」。私ですら抵抗を覚える程です。以上の理由で「最初のうち
は他のを聴いた方が」と思った次第です。決して作品自体の評価からではない事を付け加えておきます。
→同意