この曲を聴け!
Geliebte des Regens / NARGAROTH
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2007-05-12 11:06:00)
2003年発表の3rd。
タイトルの意味は「雨の恋人」で合ってるかな?
ジャケからしてこのタイトルは「雷」を暗示しているのかもしれません。
作風的にはこの前に出たEP「Rasluka PartⅡ」の流れを汲む路線を進めた感じですね。かなり演奏時間の長い曲を、ひたすらブラック特有のジリジリした音質のリフで引っ張っていく、メロウなブラックメタル。基本的にどの曲も10分を超えていて、6曲で73分というランニングタイム、しかも17分の同じ曲がバージョン違いで2種類も入っているという凄い構成なんですが、まるでKanwulfの感情が伝わってくるかのようなミサンスロピックながらエモーショナルとも言えるメロディのせいか、意外にダレません。
特に前述の17分の曲などは、そのままリフで引っ張るだけならば流石にダレてしまいそうですが、絶妙のタイミングでリフが胸を締め付けられるような高音にシフトし、曲に「流れ」を与えてより味わい深いものにしているのがほんとセンスあります。更に5曲目のバージョンでは高音リフの所でもう一本メロディアスなギターが入ってきて、胸が締め付けられるどころか締め付けられすぎて心臓が止まりそうになるくらい切ない雰囲気になります。
また、音質もRasluka PartⅡ同様ノイジーながらメロを殺したり聴いていてしんどくなるタイプのノイズではなく、あくまで(ブラック好きには)気持ちのいいノイジーさなので、長時間の鑑賞にも耐えうるのではないかと思います。ヴォーカルも邪悪極まりないがなりですが必要最小限しか出てこないし、疾走も3曲目の頭くらいしかありません。
こうした要素や工夫が、リスナーの耳を自然と素晴らしいリフへと傾けさせてしまいます。同じミニマリズムの陶酔を利用したメタル音楽でも、例えば最近人気のSUNN O)))やEARTHのヘヴィ・ドローンが「体で感じる音楽」ならば、この作品はリフに込められた痛切とも言える感情を「精神で感じる音楽」と言えるかもしれません。4曲目なんかでは音響処理の巧みさも感じますし、死暗さんの言う通り飽きません。
というか、これを買ってからというもの、何故か単調な繰り返しなのにも関わらず、耳がこの音を求めてしまう事が多いです。ブラック好きで、ミニマル要素が大丈夫な人…いや、それ以外の方にもお勧め。これ程素晴らしい作品なら、無理矢理「開眼」させられてしまうかもしれません。
また、作風的にドゥーム好きにも是非聴いてもらいたいですね。
…ただ、こんな良い作品なのに日本では今のところ流通がイマイチ良くないのがネック。私はDISK UNIONで買ったんですが、メタル専門店を3件回ってやっと見つけたくらいだし…。見つけたら是非手にとって、Kanwulfの天才的とも言えるセンスを感じてみてください!!
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