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Thornography / CRADLE OF FILTH
Usher-to-the-ETHER ★★ (2010-06-09 21:30:00)
06年発表の7th。タイトルは造語で「荊の系譜」の意。
評判の悪さから、今の今までスルーしてしまっていましたが…悪くないですよ、これ。いや、ブラックとしては寧ろ駄目なんですけど…メロデスと思って聴くと素晴らしい作品。
いつものCRADLEの作品と大きく異なるのは、大仰なシンフォニックさではなく、Daniのヴォーカルでもなく、ましてやブラックの狂性・ブルータリティでもなく、正統派的なギターリフであること。もう殆どメロデスなんですけど、世界観の演出だったり、曲展開のドラマ性だったり、至る所に彼らならではのセンスが発揮されていて、やはり一般的なメロデスとは一線を画してます。特にそれが顕著なのが上の方も褒めているメロディで、特に「Lovesick for Mina」は和風ホラーに通じる湿り気すらあると思う。
彼らが過去にIRON MAIDENやVENOMをカヴァーしている事から考えると、こういう作品を作るのも自然なのかもしれませんね。さりげなくDISSECTIONリスペクトっぽいフレーズがあるのも個人的にポイント高いです。ブラッカーからの評価が低いのは仕方ないと思いますが、これまで正統派やメロデスを聴いてきた人にとっては、一番すんなり入れる作品なのでは。
ただ、やっぱり「これは駄目だ…」と思う箇所はあって…。まずDani自身がノーマル声で歌おうとしてる箇所があること。デス声と違って、何ともコメントし辛い魅力の無さ…。もう一つは、HIMのVille Valoの起用。CRADLEのゴシック趣味に相応しい、耽美的もしくは不気味な雰囲気を出す事無く、普通に歌っちゃってます。普通に。…まあ、「LOVE METAL」を標榜する人に、この世界観の演出を振るのは無理があるかと。明らかに人選ミスだと思う。
そういう訳で、彼らの代表作には決してなり得ない作風ですが、ディスコグラフィーの中にこういうイレギュラーがあっても良いと思う作品。何の予備知識も無く、絢爛なシンフォブラックを求めてこの作品を手に取ってしまった方は、まあご愁傷様という感じですが(笑)。メロデスっぽいCRADLEも聴いてみたな…と思った方は是非是非。決して駄作ではありません。
→同意