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Evening Scandal / BOBBY CALDWELL
Straysheep ★★ (2005-08-25 05:46:00)
1978年発表のファーストアルバム
本作がリリースされた今は亡きマイアミのTKレーベルは、KC&THE SUNSHINE BAND等を輩出したソウルミュージック専門レーベルであった。
このことは本作が白人によるソウルミュージック、つまりよく言われるところのブルー・アイド・ソウルであるということを明確に示している。
日本では長らくAORというカテゴライズがなされてきたアルバムでありアーティストであるわけだが、
彼及び本作をアダルト・オリエンテッド・ロック、つまりロックの一亜種のひとりと見なすことには相当の違和感がある。
本作はROCKアルバムではないし、ボビー自身にもその意識は皆無だろうからだ。
本作はあくまでも白人によるソウルミュージックであり、ボビー自身もそう思っている筈である。
レイ・チャールズ、スティーヴィー・ワンダー、ギャンブル&ハフ流のフィリーソウル。
こうしたソウルミュージック界の偉大な才能に対する憧憬の念から発し、ボビー自身の優れたソングライティングセンスに加えて
やはりTKレーベルならではの、マイアミひいてはカリブ海をイメージさせる仄かに湿り気を帯びた、憂いを感じさせるサウンドプロダクションにより
他に似たもののない、まさにワン&オンリーの洒脱な個性を作りだしている。
かつて某アイドルデュオがカヴァーした「SPECIAL TO ME」、同じくタバコCMに用いられた「COME TO ME」等、日本で支持の高い楽曲も結構だが、
本作のハイライトと言えばやはり「MY FLAME」、そしてR&B系のサンプリングネタとしても知られる「WHAT YOU WON'T DO FOR LOVE」につきるだろう。
両曲ともに、じんわりと肌に沁み込むカリブの熱く気だるい空気感が濃厚に漂い、この当時の彼にしか作れなかった「イナタイ」個性が堪らない楽曲である。
また余り話題に上らない「LOVE WON'T WAIT」、「CAN'T SAY GOODBYE」も、前者は後のレイ・パーカーJrのスタイルを先取りしたメロウにして爽やかな佳曲であり、
後者は恐らく彼のフェイヴァリットアーティストであろうスティーヴィー・ワンダーを意識したコブシ効かせまくりのソウルフルヴォーカルが実に見事。
1978年~1982年にかけての、つまりシーケンサーによるチープな打ち込みサウンドに象徴される悪夢の80年代サウンドがポピュラーミュージックシーンを席捲する直前、
その幸せな5年間に数多くリリースされた手作りによる高い質感を備えた好盤として、本作はこの先も長く愛されカヴァーされ続けることであろう。
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