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1. 失恋船長 ★★★ (2020-10-22 16:16:17)

2014年にリリースされた6曲入りのEP。シンガーでありバンドの顔でもあるHIZUMI嬢のアジテーションヴォイスは健在、紆余曲折を経て辿り着いた崇高な理念すら感じさせる歌詞と音楽性、その二つが濃密に絡み合う事で、このバンド独自の世界観を演出してきた。時代の中で折衷しながら磨き上げた普遍的ヘヴィサウンド、ジャリジャリと下品にささくれたつギターも、ここでは逆に暗黒サウンドとしての気品すら漂わせ、唯一無二のスタイルをより一層黒く塗りつぶしていきます。

うねりを上げるヘヴィグルーブの熱を帯びた粘着力、スパーンとドラムが切ったかと思えば、ベースがねっとりを絡みつきヘヴィな現代的音像を浮き上がらさせている。
スラッシュメタルを軸に置きながらも、時代性を無視してこなかったバンドサウンド。今作は久しぶりに初期の頃を想起させるスピード感も戻り、摩擦度も増量。しかし、それは安易な原点回帰などではなく、現在進行形の深化の果ての先祖返りであり、彼等が今日まで培ってきた音楽性が結実したに過ぎない。

定番を持っているバンドは何をやっても強い。今作は、このバンドらしい黒い感性が唯一無二のキャラクター、HIZUMI嬢を伴って鮮烈に解き放たれている。ヘヴィな音像に埋もれることなく共鳴し合うキャッチネスさ、ただ攻めるだけじゃないアグレッションの開放、質の高いドラマ性を有するダイナミズム溢れるバンドサウンドに唸ります。

吐き出される呪詛、6曲入りでは物足りないよと、とんでもない渇望感を味わう銘品です。久しぶりに聴きましたが、意外なほどキャッチーなサウンドに仕上がっていて驚いた。古さに埋没しない古典芸能。彼等は同じ場所に留まらず、常にシーンを見定め攻めていた。その多様なアイデアを破綻させることなくバラエティ豊かに押し込めてきた入魂の一枚。同じ日本人であることを誇りに思える感性。スラッシュファンは勿論、ラウド系のマニアも飲み込ませるだけの力が備わっている一枚でしょう。



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