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Knock Out

前作ではボブ・ハリガンJr、ジャック・ポンティ、デスモンド・チャイルド等の外部ソングライターも招き入れメジャーシーンに切り込んできた。プロデューサーにマイケル・ワグナーという気合いの入りよう。その甲斐あって実にワールドワイドな感性に彩られた作風に仕上がった。

しかし、今作には、Cacumen時代からバンドを支えてきたリーダーのハンス・ツィラーがいない。前作の途中で解雇されたというのもあるのだが、まぁ外部ソングライターを初めとする、バンドの変革に異論があったのだろうか?ハンス抜きでアルバムが制作される形になる。
それだけに、メンバー的にはやりたい放題と言うことなのだろうが、前半からビリー・スクワイアのカヴァーまで飛び出し、完全にアメリカン仕様のジャーマンメジャーロックバンドになってしまった。

ここが賛否を別けるのだろうが、④曲目のバラードなど、けして駄作ではないのだが、余りにも狙いすぎて鼻につき、欧州風味もあるのだが優等生アメリカンナイズドサウンドが大量に溢れ出ており、そのナイズド加減は全編を覆い尽す。
それを許せるかが最大のポイントなのだろう。当時、キャプテン和田さんから凡ファイアと揶揄された一枚。それだけに世間の評価は低い。実際に寄せに行きすぎた感はある。ドイツのBON JOVIなど言われた時代もあるだ、ここまで開き直られるとチョイと厳しい。

やはりハンス抜きが、こういう作風に傾いたのだろう。リリースは1991年、時代的にはラジオフレンドリーな作風が支持されるづらい時期でもありセールス的にも厳しい結果になる。レスマンの哀愁のある歌声も、どこか余所行きに感じる。曲単位で聴けば悪くないのだが、アルバム単位で聴くと、甘口な印象が強まるのが難点。十分、及第点は超えているのだが、やはりアメリカンナイズドしすぎで個性が薄まったのが最大のポイントなのだろう。

今回久しぶりに聴いたのだが、やはり順調にレベルを上げてきただけに、個人的にはやや一回休み感強いアルバムではあるのだが、健康優良児アメリカンナイズドロックが好きな人には大いに支持されるでしょう。今回久しぶりに頭から聴きましたが、やっぱり⑥が始まった瞬間に一時停止を押しましたね。個性が死んだ、レスマン不在でも成立する作風になったのは否めないだろう。

失恋船長 ★★ (2025-02-05 00:22:29)


Glörious

デヴィッド・リースってどんな活動をしているのだろうと過去を辿りたく調べたら、まさかBONFIREに参加していたとは、しかもBONFIREは解散しており、看板ギタリストのハンス・ツィラーが唯一権利を所有する、BONFIRE名義で復活。実質は彼がBONFIRE解散後に動いていたEz Livin'が本体だ。ちなみにBONFIREが活動を止めるのは以前にもあり、そのときは看板シンガーのレスマンと二人でLessmann/Ziller名義での活動だった。
今作にBONFIREのメンバーはいない、ある意味ハンスのソロバンド的な側面もあるのだが、音楽的にはBONFIRE名義に恥じない内容になっており、とくに比較対象になりがちなシンガーの座をデヴィッド・リースが見事にやりこなしている。

デヴィッド・リースの力強い歌声はバンドに新風を送っている。例えばラスト三曲はある意味オマケだ。14はビートルズのカヴァー、そして12、13はBONFIREの名盤FIREWORKSからのセルフリメイクになる。オリジナルに慣れ親しんだ人には少々違和感があるだろうが、デヴィッド・リースが劣ると感じる事は皆無だろう。

オープニングナンバーからBONFIREらしい曲が登場、しかしアプローチの違う歌い回しが新生BONFIREサウンドなんだと理解させる。そしてこういう疾走ナンバーやらんかったよねぇな②は実に新鮮でリースの歌声がよく似合うメタリックな走る曲にグッときた。
新しいメンバーなのだが、皆キャリアがあるので熟練工の集いである。その阿吽の呼吸から生み出されるパフォーマンス。無駄のないアレンジと献身的なプレイにより極上のメロディックメタルが誕生した。

⑤みたいな王道ナンバーをリースは心得ている。それは③のようなBONFIREらしい威厳に満ちたメロディックナンバーでも贅沢に感じる。そういう余韻を受け止めるのがタイトルトラックの⑥新たなるロックアンセムとして新生BONFIREの凱歌となっている。これを聴いてリースが歴代シンガーよりも劣っていると感じるマニアは。ほぼ皆無だろう。ましてやレスマンと聞き間違えるなど大嘘つきである。⑩も昔の匂いがするなぁ。

まぁねぇ。デヴィッド・リースってACCEPTを解体させたとかNHK党並のデマを拡散する輩がいるからなぁ。どこで仕入れた情報か知らんがピュアすぎるよね。そんなデマのせいでワリを喰うデヴィッド・リースはさしずめ100条委員会でしょうか?
ならば頑張れデヴィッド・リースですよ。少しデヴィッド・リースのキャリアを探求しよう。彼の不名誉を雪がねばね。

失恋船長 ★★★ (2025-01-26 11:26:23)