ホラー映画史に燦然と輝く金字塔、故ジョージ・A・ロメロ監督作『ゾンビ』(原題『DAWN OF THE DEAD』)と言えば、米国劇場公開版、ディレクターズ・カット版、そしてダリオ・アルジェント監修版の3パターンを基本に、派生型である日本TV初公開版やら、ドイツのマニアが勝手に作ってしまった最長版やら、無数のバージョン違いが存在していることで知られています。で、お前はどのバージョン派?と問われたならば、コンマ数秒たりとも躊躇うことなく「アルジェント版!」と即答する準備は万端。ロメロが作品に込めた消費社会・文明に対する批評性が薄められているとしてマニア受けはイマイチなれど、カット割りがスピーディ且つアップテンポで、『ゾンビ』のサバイバル・アクション物としての側面がより強調された同バージョンの味付けが、個人的に一番グッときましてね。それに何より、ここにはGOBLINが手掛けた最高にイカした劇伴がある!と。特に映画序盤、警察/不法移民/ゾンビが三つ巴の地獄絵図を繰り広げるアパートの場面で、名曲②が流れないなんてちょっと考えられないですよ。この勇ましく緊迫感に満ちた名曲を聴く度に、ウーリー大暴れの図が脳裏に浮かんでほっこりするという(それはどうか)。 そんなアルジェント版の劇中使用曲をまとめて収録したサントラ盤たる本作ですが、『ゾンビ』を見たことがない方が、単純にプログレッシブ・ロック作品として触れると、唐突に陽気なピアノ曲やカントリー、更には民族音楽風コーラスが挿入されたりと、ロック色の薄い、少々アバンギャルドな作りに戸惑う危険性あり。映画を見てからだと、聴く度に劇中の名場面の数々が瞼の裏に蘇って感動に浸れる名盤なのですが…。