リリース当時の"No Dice"最後を締めくくるのはやはりピート作の壮大なバラードです。イントロから全体にアコースティクな曲調、これは…"Eight Days A Week"? いや違いますね、あの曲よりは落ち着いた"お互い足りない所を補完し合おう"みたいなラヴソングとなっています。ストリングスが加わり静かでいながらドラマティックに。だが最終的に向かう所はタイトルの通りで何かバンドの行く末を予感させますね。それも今だから言えることなのであって、ここはまず曲自体をそしてピートの才能をじっくり再評価しましょう。
本作時点での新メンバー・ジョーイを含む4人の合作名義になっている、シャッフル調のロックンロールないしブギ―です。ひたすら明るく楽しい曲調ですが、歌詞はわかりやすいけど英国特有のヒネリが感じられます。そりゃまタイトルからして歌詞には入っていないけど英国の地名ですから。見方によってはBADFINGERの代表曲とまでは言わずとも注目すべき重要な曲かと。私的にはエルヴィスの"Don't Be Cruel"に影響されイーグルスの"Heartache Tonight"に影響を与えた? どうでしょうね。
本作リリース当時のB面1曲目はピート作のカントリー風で、音像だけ聞くとのんびりしてネアカな佳曲です。R&Bからカントリーまで貪欲に吸収するUKアーティスト全般に見られる引き出しの多さを実感できます。ただ歌詞がですね、"My life may not be long"はズバリ重大な出来事の予言みたいだし、"Say You'll take from me what I will give to you"なんてまるで搾取してくださいと言ってるようなもの。尤も当然ピート自身当時はそんなつもりではなく過ぎたから言えることでしょう、それにしても…。
実は案外好きな人が多そうな隠れ名曲? 私も最近BADFINGERに再注目するようになって知った、甘いメロディが素晴らしいピート作の美しいバラードです。不安げに揺れるピアノのイントロに続く歌メロがストレートながらも胸を打ちます。どうやらピートがドラマーのマイクから聞いた不幸な実話を基に作った曲らしく、特に最後のNobody's gonna help you nowなんて歌詞がもう絶望的ですね。既出の通りBOB DYLANと並び称せられる早世のフォークシンガーTIM HARDINが2年後にカバーしています。Without YouをHARRY NILSSONがカバーした件といい、BADFINGERの曲はシンガー&ソングライターさえもオリジナルそっちのけでカバーしたくなるほど魅力的だということでしょう。
本作のみ参加のBOB JACKSON単独作品となるブルージーでちょいヘヴィなナンバーです。当然ながらBEATLESの弟分バッドフィンガーがそれまで築いてきた音楽とは似ても似つかず、でも違和感を感じるより先にむしろ却って新鮮な感覚になりました。"抱いていた夢は全て忘れよう""いつになったら振り返ることができるんだ"と歌詞もヘヴィで"When will we ever learn?"なんて私がちょっと前に紹介した"花はどこへ行った"そのもの。色んな意味で名曲としておきます。
お蔵入りから25年以上後に日の目を見た本作ではJOEYの抜けた穴を他のメンバーが見事に埋めています。ドラムスのMIKE GIBBINS作となっているこの曲も、弾き語り風の哀愁味が滲み出るフォーク調の隠れ名曲。マイクはIVEYS時代既にThink About the Good Timesという曲を書いていますが、今回は"お前が目覚めた時に俺がいなくてもまた帰ってくるからな"と、まるで一旦辞めたPETEがすぐに戻ったのを描いたみたいで歌声ともども生々しいですね。あわよくばJOEYもと期待を込めて? ともあれこれほどの才能が集結したバンドだったんだと改めて認識できます。
TOM EVANSと、JOEYに代わって本作のみ参加した元INDIAN SUMMER、ROSSのBOB JACKSONとの共作になるダークなバラードです。確かにギターフレーズを含め全体にメロディアスで、メジャー調になるサビのコーラスはBADFINGERならではと言えますが、やはり"栄光の日々は過ぎ去った"みたいな内容が当時の状況と被ってしまいます。いかにも最早醒め切ったトムが係わった曲という印象ですね。
当時の状況を熟知していたTOM EVANSが諸悪の根源たるマネージャーを皮肉った、いやモロに批判した内容のある意味プロテストソング? BOB DYLAN風の気怠そうな歌い方が却って痛快ですね。最後で"こんな争いを望んでたと思うの?"なんて言ってるけどもう遅い、こんな曲があったらそりゃ訴訟が無かったとしても発売差し止めになりますって。曲調がポップな分そんなイタさが残念な"頭で考えた"曲と言えましょう。
前作Wish You Were Here完成後ジョーイが脱退したまま1974年12月にレコーディングされていたがワーナーからの訴訟によりお蔵入り、約四半世紀後の2000年11月正式にリリースされた真にピート存命中最後のアルバムです。そんな本作のオープニングを飾るピート作のご機嫌なポップロックテューンは、かようなバンドの実態と裏腹に元気一杯なピートのヴォーカルに全盛期そのままのブリティッシュ・パワーポップな音像が光る傑作です。ただこのタイトルからするとピート、本音はひと休みしたかったのでしょうか、そう思うとカラ元気にも聞こえてしまいます。
何か力が抜けた雰囲気のジョーイが即席で作りました的なポップナンバー。間奏のキーボードがといい全体にメジャー調なのに哀愁メロディですね。因みにwhite line userってヤバい意味ですからアノ状態を表現してたりして。ROD STEWARTのAtlantic Crossingオープニングに同名異曲がありますがそちらほどコミカルでもなし、あと一歩ってとこでしょうか。
TOM EVANSにとって遺作となる1981年リリースの本作、当時でいうB面1曲目はJOEY MOLLAND作のちょいハードなパワーポップです。過ぎ去りし日々を懐かしむと言うより"偽りの愛"やら"譲り合うことも無く"やら一時期PETEと対立して脱退した時のことを歌っているみたいでネガティヴな印象ですね。後年やはり対立するTOM亡き後も"独りBADFINGER"としてこの曲を演り続ける姿は一定評価しますが。
TOM EVANSにとって遺作となる1981年リリースの本作、当時でいうB面1曲目はJOEY MOLLAND作のちょいハードなパワーポップです。過ぎ去りし日々を懐かしむと言うより"偽りの愛"やら"譲り合うことも無く"やら一時期PETEと対立して脱退した時のことを歌っているみたいでネガティヴな印象ですね。後年やはり対立するTOM亡き後も"独りBADFINGER"としてこの曲を演り続ける姿は一定評価しますが。
Wish You Were Hereに続きHead Firstというアルバムがレコーディング済みで1975年にも発売のはずがお蔵入りになっていまして、元々はそこに収録されていたトム作のパワーポップナンバー。ロックアーティストは奴隷で最後は墓場送りだとかロックビジネスに対して相当お怒りの様子です。何も知らなかったピートに対してトムは裏の裏まで熟知してました。サイケ期のBEATLES風なHead First ver.に比べてテンポアップし引き伸ばされ、ピートの苦しみを代弁するようなシャウトがカッコいい仕上がりになりましたね。今更何を…なんて言わずに聴いてやってください。
TOM EVANS存命中のラストアルバムから最初にシングルカットされた、これぞBADFINGER節!と思わず膝を叩きたくなるメロディアスなナンバー。そんなツボをわかっているTOMと、前作限りで参加したJOE TANSINの共作です。代わって本作で正式メンバーとなったTONY KAYEのメリハリあるキーボードが心地良く花を添えます。これだけの力作でも全米最高56位で最後のヒット、本国では掠りもせずと散々な結果でした。そんな訳でここはチャートの結果なんぞ無視してひたすら楽しむのみと致しましょうや。