初の女性Vo、久保田陽子(FASTDRAW~PROVIDENCE)の加入のみならず、コンポーザーとしての才も発揮するサイドGの田中康治を迎え、SABER TIGER史上初めてとなるツインG編成への移行。更には十数年の活動歴において初のフル・アルバムのレコーディング・・・と、初物尽くしで'92年に発表された1stフル・アルバム。 赤尾和重の系譜に連なる、男性シンガー顔負けの力強さでメタル魂を鼓舞してくれる久保田のハスキー・ボイス、劇的な構築美を湛えてスリリングに絡み合うツインG、それにリフ/リズム・チェンジや変拍子の多用、ドラマティックな曲展開といったプログレ・メタル的要素がふんだんにフィーチュアされた楽曲の数々は、80年代のストレートなジャパニーズHM路線とは大きく異なり、また一方で、次作以降に確立されるSABER TIGER流HMサウンドともやや味わいを異する、本作でしか聴くことの出来ない過渡期的なユニークさを秘めており、特にOPナンバー“STORM IN THE SAND”は久保田時代を代表する名曲の一つじゃないかと。 その“STORM~”と、ラストに置かれたツインGによるドラマティックなイントロの時点でガッシと掴まれてしまう逸品“MISERY”のインパクトがデカ過ぎるせいで、中盤の楽曲の存在が完全に霞んでしまっているきらいはあるものの、じっくり聴いてみれば個々の楽曲の完成度も決して低くはない(特に本編前半)。満を持して作り上げられただけの事はあるデビュー作だ