5th。 曲づくりの過程でどんどん楽器の音を外していった結果、最終的にはほぼ肉声のみ(聴けば分かるが、加工もふんだんに施されている)で全てが形成された今作は、まさに「オーガニック・シンフォニー」とでも形容すべき声の魔法に彩られた作品となっている(勝手に命名)。 MEDULLAを聴く前に「bjorkの新作は人間の声だけで作られたアルバムらしい」という情報を聞いて、私はエンヤみたいになるのか、はたまたグレゴリオ聖歌っぽい内容になるのか、どちらにしても重厚な内容となるのは間違いないだろうと踏んでいたものである。 しかし実際に聴いて、私の予想が当たっていたのは後者の「重厚な内容」ということだけで、エンヤ風でもグレゴリオ聖歌もどきでもない、私が今までに聴いたことのない、しかしbjorkの匂いのする世界がそこには在ったことが分かった。 もっとも多くのリスナーと同じく(?)、第一印象は「失望」であったことは否定しない。 前作「VESPERTINE」から私が受けた感動はとても大きく、3年ぶりの新作ということでそれだけ期待も大きかっただけに肩透かしを食らってしまった感じを受けたからだ。 現在は相当聴き込んでいるので、この作品の良さが朧げながら掴みかけてきているような気がしているけど、今作はスルメ盤なのかもしれない。 ykさんが「入門編としては厳しいかもしれない」と仰っているが、私もそうだと思う。 しかし、bjorkの今までの作品を知らず、MEDULLAで初めて彼女の音楽に触れることになる方の方が意外と今作の世界観には入り込みやすいかもしれない。 かなり乱暴な括り方かもしれないが、bjorkの作品は全てが実験的なものであり、それらを全て飲み込んだ上でbjorkを愛してきたファンの方々(の多く?)が今作に戸惑いを覚えたということで、既出作品とはひとあじ違った魔法が今作にはかけられていることが分かる。 そして、その「声の魔法」が効力を発揮するまでには少し時間がかかるかもしれない。 というわけで持っている方はぜひもっと聴き込んでみてください(笑)。 GREATEST HITSを出して一区切りついたbjorkが新たに繰り出してきたMEDULLAがこういう内容で正直戸惑い驚きましたが、次の作品ではどんな魔法をかけてくれるのかも楽しみなところだと思います。 Where Is The Line、Oceania、Triumph of a Heartが好きです。