3rdとなるこのアルバムは、ミドル・テンポの楽曲における素晴しい進化が、特色になっている。WOMAN OF DARK DESIRE ,CALL FROM THE GRAVE ,ENTER THE ETERNAL FIRE ,13 CANDLE・・・この4曲に漂うdarknessは、これまでspeed一辺倒だったBATHORYが、一皮むけて、真のBLACK METALを表現する手段を、身につけた金字塔的なアルバムと言えよう。そして、その後のHAMMER HEART ,TWILIGHT OF THE GODS ,BLOOD ON ICEと言った3枚のヴァイキング・メタルのルーツにつながったことは、いうまでもない。 QUORTHONの才能に最大級の賛辞を、送り続けたい。
皆様の思いいれに水を差すようで申し訳ないのですが…このアルバムに限らず、BATHORYの初期作品はどれもセッションメンバーを迎えて制作されている、という説が非常に有力です。恐らく本当だろうと思います。打ち込みが殆ど存在しなかったこの時代、マルチプレイヤーなんてレベルの付け焼刃のプレイヤーがこのドラム叩くのは無理でしょ(汗)。まあ早回しという手もあるかもしれないけど…。 僕は「ヨーロッパスラッシュの最高峰」という宣伝文句に惹かれて、このアルバムを買いました。ちなみに当時の僕のスラッシュの認識はというと、TESTAMENTや4thの頃のKREATORのように、爽快なスピードで気持ちよく突っ走る、というものでした。ゆえに…初めて聴いた時のマイナスのインパクトは、未だに記憶が鮮明ですね。これは本物の狂人の音楽じゃないかと。このありえないほどの騒々しさは、親に散々「こんな騒音に夢中になって」と嫌味言われながらメタルにのめりこんでいた僕にとっても、想像を絶するものでした。 しかし、その邪悪な世界観、そして実は整合感がちゃんと取れている激速ビートを感じ取れるようになると、途端にこのアルバムは名作と化しました。こんなスラッシュの形もあったんだ!と、純粋なサプライズがありました。以降、初期のヨーロッパスラッシュにのめりこみ、ブラックメタルがブームになれば喜んで飛びついていったわけです(笑)。 他の方も言われているとおり、このアルバムの醍醐味は速い曲だけではなく、遅い曲も聴き所となっています。特に"ENTER THE ETERNAL FIRE"は、BATHORYが誇る永遠の名曲でしょう。この手のナンバーでは、次作の"BLOOD FIRE DEATH"という名曲もありますし、このスタイルが後続に与えた影響も本当に大きい。僕はどちらかというと偏った作風が好きなので、このアルバムが一番の愛聴盤だったわけではないんですが、それでもトータリティでこのアルバムがBATHORYの最高傑作である事は疑いもないところです。メタル史の裏側で妖しい輝きを永遠に放ち続ける、影の名作でしょう。