ブラジルのVIPERが、'93年に川崎クラブチッタで行った初来日公演の模様を捉えた実況録音盤。 メロディック・パワー・メタルの名盤と評判の『THEATER OF FATE』(’89年)で一躍注目を集めるも、間もなくアンドレ・マトスが脱退。その後発表された3rd『EVOLUTION』(’92年)における大胆な音楽性の刷新がファンの間で賛否両論(つか圧倒的に「否」の意見が優勢だった)を巻き起こす中敢行された来日公演ということで、タイミング的には最悪もいいところ。動員もあまり良くなかったと記憶しておりますが、にも拘らずここに収められたライブが熱狂的な盛り上がりを聴かせてくれるのは、当日会場に集結したのが(批評に左右されない)筋金入りのVIPER MANIACSだったこと。そして、メタルというよりはロックンロール/パンキッシュな疾走感に貫かれたサウンド(QUEENの“WE WILL ROCK YOU”の倍速カヴァーもパンク・バンドが演りそうなアイデアですよね)が、スタジオ盤よりもライブで聴く方が遥かにカッコ良く響いたことがその要因でしょうか。 ハッキリ言ってシンガーの歌唱にしろ、楽器陣の演奏にしろ、初来日の喜びと緊張がない交ぜになって先走っているようなパフォーマンスは相当に危なっかしいのですが、このサウンドには不思議とそうした《気合一発!轟音で押しまくる、若さ溢れるライブ》(帯より)なノリがマッチしていて、文句を付ける気が起きません。⑩におけるバンドと会場が一体となった盛り上がりっぷりなんて何度聴いてもアガるものがありますよ。 「胸が熱くなる」と言うよりは、「気分がほっこりする」タイプのライブ盤なれど、大好きな作品です。VIPER再評価の切っ掛けの一つにどうぞ。