'94年と'96年にピーターがThe Abyssとして出した『The Other Side』と『Summon The Beast』の2枚を1枚にまとめたアルバムです。 M1~M8が『The Other Side』、M9~M16が『Summon The Beast』みたいです。 メンバーは全員ピーターをはじめHypocrisyのメンバー(当時)なのですが、音はほとんどHypocrisyとは別物。粗い音質で、高速ブラストのドラムにシャリシャリしたギターサウンドが乗る、割とスタンダードなブラックです。ジャケット内部に書いてありますが、HellhammerやBathoryといったブラックの始祖にあたるバンド、あるいはImmortalやGorgorothといったブラック始祖の生々しいサウンドを受け継ぐバンドの影響が濃いようです。実際、『The …』の方でHellhammerのカヴァーを入れています。 ただ、音質の粗さからスカンジナヴィアン・ブラック特有の荒涼感は色濃く表れているのですが、闇が押し迫って来るような暗黒の雰囲気はあまり感じられません。何というか、ピーター自身が色々なカラーの音楽を手掛けてきている人だからか、ブラックの暗黒に染まりきれていないように思えました。ブラックの闇がそう簡単に染まれないほど深いのか、はたまたピーターが数多く手にしているカラーが強すぎたのか。 まぁそれはいいとしても、生々しさや粗さを追求するあまり、リフやメロディがあまり印象に残らないのは残念です。数々のブラックメタルをプロデュースしてきたピーターなので、ここはもう少しリスナーにぶちかませるようなポイントが欲しかったです。 ピーターのボーカルは今回ドスのきいた低音デスボイスを封印、高めのデスボイスです。ピーターだけでなく、あとの2人(ミカエルとラーズ)もボーカルをやっているようです。ただ、音質とボーカルワークのせいか、時に悪く言うところの「カエル声」になってしまっているボーカルがあるのですが……誰の声だ? ちなみに、『Summon…』のボーカルは主にHypocrisyメンバーのミカエル・ヘドルンドが担当しているようです。