HR/HMシーンにおけるロック・オペラ・プロジェクトに先鞭をつけたPHENOMENA。『PHENOMENA』(’84年)『DREAM RUNNER』(’87年)『INNERVISION』(’93年)の3作をもって完結をみた同プロジェクトが復活し、'06年に発表した4thアルバム。 小さなお子様が目にしたら悪夢にうなされそうなホラー映画調のジャケットがフィーチュアされた本作は、過去作に比べるとゲストの顔触れはやや地味め(CLOVEN HOOFの参加には驚きましたが)。また簡素なプロダクションの下、やたら殺伐としたGリフが刻まれ、曲によってはラップ調のVoを取り入れていたりと、あからさまに流行――それも周回遅れ気味――を意識している感じなのも何だかなぁと、アルバム序盤はあまり良い印象が持てずにいました。 しかしながら、聴き進める内に本編は徐々にドラマ性と抒情性を回復。先に「ゲストは地味」とか書いてしまいましたが、参加シンガーはトニー・マーティン、リー・スモール、キース・マレルら実力派揃い。特にファンキーなグルーヴが効いた⑨を筆頭に、力づくで楽曲のクオリティをランクUPさせてしまうグレン・ヒューズのソウルフルな歌声は別格の素晴らしさですよ。またキースが歌う幻想的な④、重厚壮大な⑦、ラップVoを取れ入れた③も実は案外良い曲だったりと、トータルではPHENOMENAの名の下に発表されるに相応しい品質に仕上げている辺りは、流石ギャレー兄弟といったところではないでしょうか。 ちなみに本作、ジャケットをよく見ると名義が《FROM TOM GALLEY THE CREAT OF…》となっており、これは3rd『INNERVISION』発表後にプロジェクトの権利を巡って、メンバー兼プロデューサーだったオライアンと揉めたことが影響している模様。
1.Smash It Up (Lee Small on Vocals, Mat Sinner Bass, Magnus Karlsson Lead Guitars)
2.Reality (Toby Hitchcock on vocals and Mike Slamer on Lead Guitars)
3.Homeland (Rob Moratti on vocals and Martin Kronlund on all Guitars)
4.Going Away (James Christian vocals and Tommy Denander Martin Kronlund on Guitars)
5.Gotta Move (Ralf Scheepers on vocals and Christian Wolff &Tommy Denander on Guitars)
6.How Long (Lee Small on vocals and Martin Kronlund on Guitars)
7.Shake (Mike DiMeo on Vocal and Martin Kronlund on Guitars)
8.Fighter (Terry Brock on vocals and Steve Newman on Guitars and backing vocals)
9.Dancing Days (Niklas Swedentorp on Lead Vocals with all Coldspell members)
10.Stand Up For Love (Chris Antblad with JAVA Gospel Choir)
上記豪華ゲストが参加しためるトム・ギャレー主催のフェノメナプロジェクト第6弾。ド頭からリー・スモールのグレン・ヒューズを彷彿とさせるエモーショナルが歌声が炸裂、楽曲も今まで以上にAOR風味満点のHM/HRサウンドを披露と、随分と垢抜けた印象が強い。適材適所とも言える名シンガーが揃い、自慢の喉を披露と、ちょっとしたカラオケ大会の模様だ。そんな豪華な顔触れの恥じないゴージャズな雰囲気の歌モノロックは、派手になった分、このプロジェクト独特のコクのようなものが薄まり、レーベルの意向に沿った企画モノへと変貌したように感じる。 ロブ・モラッティが歌う③はグレン・ヒューズのソロ『From Now On』からだったりと、既発音源もあるから尚更だったりするのだが、そんな細かい事を気にせずに、名シンガーと腕利きギタリストとの共演を楽しむのが一番でしょう。 こういうお祭り感の強まった企画モノは楽しんだモノ勝ちですからねぇ。