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AL-KAMAR
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1.
Usher-to-the-ETHER
★★★
(2011-06-14 00:07:02)
2011年発表の1st。
クリエイターやミュージシャンが、レーベル等の制約に縛られず、自身の創造性を発揮出来る場所として徐々に注目を浴び始めている同人音楽シーンですが…まさかそのシーンから、こんなアーティストが生まれるとは。なんとALCESTやAMESOEURS、LANTLOS辺りに影響を受けたと思しき、アーバニズムの危うく儚く、ダークな側面を描くシューゲイザー・ブラック。
このアーティスト、リフやメロディによって「儚さ」「鬱感情」などの微妙なニュアンスを表現出来てはいるんですが…思いっきりその感情に沿ったメロディを弾いてくれるので、ある意味キャッチーにすら聴こえるのが素晴らしいと思う。表現している、しようとしているものが、繊細さを要求されるものなのにも関わらず。
この手のバンドって、時々情景描写に重きを置きすぎるきらいがあって、リスナーが付いてこれるかどうかが二の次になってる(その分本格的とも言う)ことも少なくないんですが、AL-KAMARは1つ1つのフレーズに、「聴き手と絶対にこの情景を共有したいんだ」くらいの意志を感じるほどに、展開やメロディが分かりやすく鮮烈。特にKRALLICE並のトレモロ地獄パートや、儚いピアノと感情が磨耗するようなノイズリフを乗せて疾走するパートを含む「Hypocrisy Luna」が素晴らしい。
また、この手としては珍しく(というか唯一?)初音ミクを起用していますが、これも試みとしては大成功しているように思います。BorisのAtsuo氏はヴォーカロイドについて「人々の妄想は人間には最早担えない状態になっている」として、ヘヴィなものとしていましたが、この作品ではヴォーカロイドの声が逆説的に、妄想的で抽象的な情景にリアリティを与えるものとして機能しているように思えるんですよね。音像的には、少し前に出過ぎなので、もう少しミックス面でも抽象化してくれると聴きやすいですけど。
ただ、エフェクトに頼ったヴォーカルと、拙い英詩はちょっとマイナスですね…特に英詩。特定の人物へのディスにインスピレーションを受けたものも多いという世界観自体はいいとしても、「I doesn’t know」とか「You’re Die」とかふざけてるのかと思う。この手の音楽はどれだけ聴き手を没入させるかで価値が決まると言っても過言ではないと思うし、この世界観にこういうお馬鹿な感じは明らかに不要。こんな推敲の手間すら惜しんだような歌詞に、誰が心象を投影したがるのか…と単純に疑問。
と、最後は少し辛口でしたが、同人音楽リスナーがシューゲイザーブラックの入り口とするには、Neige関連よりも適切ではないかと思わせるほど、この手のジャンルの美味しい部分を強調したかのような作品。同人音楽シーンのギタリストって、ギターヒーローになろうとする人が多すぎなので、ギターをこういう風に聴かせられる人って貴重だし素晴らしいと思う。是非これからもコンスタントに活動していって欲しいですね。
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